7.オルタナティブ運用・ESGなどの扱い
運用計画を策定する度に「変化」を作るのは大変なのだが、基金の関係者は自らの存在価値をアピールするために「新しいアイデア」を運用計画に取り込みたいと思う傾向がある。そして、それ以上に、そうした傾向をより利益性の高いビジネスにつなげたいと意図する運用会社や広義の年金サービス業界(運用コンサルタントなど)が存在する。
新しさがあって手数料率が高いのは、たとえば、ヘッジファンド、プライベートエクイティ、商品ファンド、仕組み商品などの「オルタナティブ運用」だ。こうしたものの一部には、(1)単なる投機でなく投資と位置づけることができる、(2)手数料率がリーズナブルで、(3)年金基金側で運用者の管理が十分できる、(4)年金加入者に対する説明責任を完全に果たせるようなものが「あるかもしれない」。
しかし、企業年金などを見ると、しばしば年金運用として最低限必要な上記の4条件を満たさない運用が採用されることがある。端的にいうと「ビジネスに取り込まれた」ということだ。
また、ESG投資(社会的責任投資)などのポートフォリオの効率性を損なう可能性がある「新奇なコンセプト」に公的年金が取り込まれないかという点についても注目しておきたい。
個人投資家の運用の参考になるテーマではまったくないのだが、運用関連業界のビジネスの(必ずしも良くない)たくましさを理解する上で注目すべき材料になる可能性がある。
もちろん、筆者個人は、公的年金の運用がこの種のビジネスに取り込まれないで、説明責任を十分果たすことができ、さらに低コスト運用に集中することを望んでいる。
オルタナティブ運用などについては、個人はただ見物するだけでいい。運用業界のビジネス構造を理解する上での参考になるかもしれない。
今のところ、追加的に運用への一部組み入れを検討するに値するのはREIT(不動産投資信託)くらいだろう。