2.政府の中期経済見通しの扱い

 公的年金のアセットアロケーションは、まず内閣府が中期経済見通しを作成し、各基金の主務大臣(GPIFであれば厚生労働大臣)が、この経済見通しを参考に運用計画を作るように指示することで検討開始される。

 経済見通しの前提がケースAからケースHまで8通り提示される。これが話題となった前回の検討プロセスを覚えている読者もいるだろう。

 しかし、率直に言って、政府の中期的経済見通しは運用計画の基礎とするには「全くアテにならない不確かなもの」だ。

 見通し策定の主体が政府であってもなくても「経済の予想」は難しい。まして、中長期の予想など、前提条件と数字付きの「創作物語」に近く、政府が発表する予想には政治的な建前が入る。たとえば、前回の予測では、デフレ脱却が上手くいって2%のインフレ目標が達成されるシナリオのウエートが大きかったが、現実はそうなっていない。

 常識のあるファンドマネージャーなら、特定のマクロ経済の見通しを100%信じてアセットアロケーションを作るようなことはない。
 公的年金は、政府の経済見通しに気を遣う必要がある一方で、運用計画は現実的なものを作らなければならないので(筆者は100%後者に集中したいと思っているが…)、この辺りのバランスをどう取るのかは、部外者から見て面白いはずだ。

 個人投資家は、ここでは「見物」するだけでいい。「経済予測に基づく(と称する)運用計画」が頼りないものであることを実感してくれるとなおいい。