人口の増えない日本で、なぜJR4社は最高益を更新できるのか

 人口の増えない日本で、鉄道業は成熟産業と見られていましたが、新幹線収入の拡大によって、JR東海、JR東日本、JR西日本は安定的に最高益を更新してきました。新幹線は、かつてビジネス客中心の乗り物でしたが、今や「国民の足」として利用が拡大してきました。そこに、外国人観光客の利用拡大がさらに追い風となっています。グリーン席の利用率増加も収益拡大に寄与しています。

 2015年11月に上場とともに完全民営化(政府保有株をゼロにすること)を達成したJR九州も、先行き収益を拡大していくと予想しています。人口減少地域で鉄道業の収益が悪化する不安はあるものの、九州新幹線の収益拡大が期待されます。また、早くから観光客を楽しませる多様な観光列車(デザイン&ストーリー列車)の導入を進めてきた効果も、九州地区へのアジアからの観光客増加で効果を発揮します。ホテルや不動産業などへの多角化も進んでおり、人口減少を補って、グループで収益を底上げしていく体制ができあがっていると考えています。

 JR九州が導入で先行した豪華寝台列車(クルーズトレイン)「ななつ星」の旅は、予約倍率が10倍前後で好調です。従来の寝台列車とは異なり、動くホテルのような快適さが受けています。JR九州の成功を見て、JR西日本、JR東日本も豪華寝台列車の旅を導入しましたが、いずれも好評です。

訪日外国人観光客は豪雨・地震で減少したが、一時的と判断

 最近、株式市場で、インバウンド関連株【注】の株価が冴えません。豪雨や地震の影響で訪日外国人の数が減少したことが影響しています。

【注】インバウンド関連株:訪日外国人観光客による日本国内での消費支出を「インバウンド消費」と呼びます。インバウンド消費の増加で恩恵を受ける銘柄を「インバウンド関連株」と呼びます。JR4社はインバウンド消費の恩恵で、新幹線や観光事業の収入が拡大しているので、インバウンド関連株と見られます。

訪日外国人観光客数の推移:2011年1月~2018年9月

出所:JNTO(日本政府観光局)より楽天証券経済研究所が作成

 

訪日外国人観光客数の上位8カ国:2018年9月

出所:日本政府観光局(JNTO)より楽天証券経済研究所が作成

 6月18日に大阪府北部で起こった地震や、6月28日から7月8日にかけて西日本を中心に集中豪雨による被害が広がった影響が出ています。さらに、8月から大型台風の来襲が続き、9月に豪雨で水没した関西国際空港が閉鎖された影響、9月に北海道で大規模地震が起こった影響が出ています。

 ただし、外国人観光客の減少は一時的と考えています。来年2019年には、再び過去最高を更新し続けると予想しています。

 インバウンド・ブームが続く構造要因が変わっていないからです。

・日本が観光地として魅力的であること

・アジアで、中間層(富裕層と貧困層の中間にある層)の所得が、海外旅行ができるくらいまで増加してきたこと

・日本政府が、観光ビザ発給の要件緩和など、海外からの観光客誘致策を取ってきたこと

 したがって、いま下落しているインバウンド関連株は、長期投資で買い場を迎えつつあると考えています。

 ちなみに、2011年3月の東日本大震災の後は、外国人観光客の減少が1年あまり続きました。地震後に発生した福島第二原発の事故による風評被害の影響が長引きました。天然災害のみの影響ならば、過去の経験則から数カ月で一巡すると考えられます。