ブリヂストンの業績見通し:2015年12月期に営業最高益を更新した後、停滞

ブリヂストンの業績見通し

出所:同社決算資料

 ブリヂストンには、高い成長率は期待できませんが、利益が安定的な好配当利回り株として、評価できます。

 長期的な視点に立つと、自動車の保有台数の増加にしたがって、タイヤの世界市場は拡大していくので、ブリヂストンはいずれ最高益を更新していくと予想しています。定期的にタイヤの取り替えが必要になることが、安定的な業績拡大に寄与します。

 タイヤ生産は規模のメリットが大きく、タイヤ世界首位【注】で、先に世界市場を押さえたブリヂストンの優位は簡単には揺らぎません。

【注】2016年のタイヤ世界シェア上位8社

①ブリヂストン(14.6%)、②ミシュラン(14.0%)、③グッドイヤー(9.0%)、④コンチネンタル(7.1%)、⑤ピレリ(4.2%)、⑥住友ゴム(4.0%)、⑦ハンコック(3.3%)、⑧横浜ゴム(2.8%)

出所:タイヤビジネス誌。()内はシェア。

ブリヂストンが世界トップ企業になるまでの苦悩

 ブリヂストンが世界トップのタイヤメーカーになれたのは、1988年に米ファイアストンを買収した成果と言えます。ただし、買収を生かして成長できるまでに長い年月がかかりました。

 大型買収の正しい評価は、10年、20年の長い年月を経てからでないと下せません。投資家やアナリストの評価は往々にして短期的で、大型買収の本質をわかっていないことが多いので要注意です。それをつくづく感じさせられるのが1988年の米ファイアストン買収です。世界企業として飛躍した今日のブリヂストンを見れば、この買収は大成功だったと結論づけることができます。ただし、その評価は二転三転しました。

 買収直後の1988~1992年、投資家やアナリストからは「割高な買収」と批判されました。イタリアのピレリ社と買収を競う形になったため、買収価格は当初予定より大幅に高くなりました。それに加え、買収直後に米GMがファイアストンからのタイヤ調達をやめる方針を発表したことや、ファイアストン工場の生産や品質管理に想定以上の問題があることが発覚したことが痛手になりました。

 ブリヂストンは歯をくいしばってファイアストンの立て直しに邁進しました。その成果でGMへの納入も再開し、ファイアストンは高収益会社に生まれ変わりました。1990年代にはブリヂストンの海外収益の柱として育ち「買収の好事例」としてアナリストから高く評価されました。

 ところが、2000年に買収の評価が再び暗転しました。米国で「ファイアストン製のタイヤを装着したフォード車が横転事故を起こし多数の死傷者が出ている」との報道が出てから、ファイアストン・バッシングが始まったからです。事故原因が特定されていない中で、ブリヂストンはファイアストン製タイヤ1440万本を自主回収。フォード社とは事故原因をめぐり訴訟になりました。

 この影響でブリヂストンは収益が悪化、株価も大きく下がり、「ブリヂストンはとんでもない会社を買収した」と批判されました。フォード車の事故については、最終的に「タイヤだけが原因ではない」との調査結果が出て、フォードとも和解、ファイアストンは再び立ち直りました。長い苦労を経て、ファイアストンは今、ブリヂストンのグローバル戦略を支える要となっています。

 買収で売られる株、買われる株の評価は、短期投資家の視点ではなく、会社とともに生きる超長期投資家の目で見ていかなければならないと、私は痛感しています。
 

 

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