3.メルペイの収益化は不透明だが、赤字額は30億円前後にとどまる見込み

a.提携店舗数が要

 ペイメントサービスのメルペイは、早ければ年末頃にローンチ(開始)するもようです。その際に、ライン(3938)の「ラインペイ」が予定している2018年時点の提携店舗数100万店で利用できるとの発表があれば幸先がよさそうです。ソフトバンク(9984)系のペイメントサービスである「ペイペイ」など参入企業の増加を考慮すると、提携店舗数の獲得競争は熾烈とみられます。

b.相対的に低いユーザー獲得コスト

 メルペイは当面赤字となる見込みですが、米国のメルカリのような多額の赤字額にはならないでしょう。規模拡大を優先するため提携店舗から手数料を得ることは難しいですが、ユーザーの獲得コストは抑制できる見込みです。

 メルペイの最初のユーザーは、メルカリのMAUになるでしょう。特にメルカリで売買をしたことがあるユーザーは、既に銀行口座を登録しているため、ストレスなくメルペイを使いこなせると思います。メルカリのユーザーにとっては、中古品の売上金がメルカリの外の世界でもスムーズに使えるようになることは魅力的です。高評価を集めたメルカリのユーザーに対してメルペイ上で何らかの特典が付くとしたら、メルカリで中古品を売るモチベーションも高まるでしょう。「メルカリの中古品」⇔「メルカリ外のリアル店舗及びオンライン店舗」にユーザーのお金が循環することが期待されます。

 メルカリのユーザー以外の獲得については、メルカリで実現できている銀行口座登録のしやすさが有利に働くでしょう。単純なことかもしれませんが、メルペイに興味を持ってもらったときに、チャンスを逃すことなく銀行口座まで登録してもらうことが重要な一歩になります。

c.収益化は金融サービス次第

 メルペイ単独の黒字化は、金融関連のサービス次第です。メルカリユーザーを中心としたリボルディング払いのサービスや、事業者向けの短期融資の展開が期待されます。メルカリは基本的にCtoC(消費者間)のマーケットですが、今後BtoC(事業者から消費者へ)にユーザーが広がれば、短期融資のニーズが出てくると考えられます。アマゾン・ドット・コム(AMZN)やペイメントサービスのペイパル(PYPL)は、サービスを利用している事業者のお金の流れが見える立場を活用して、事業者向けの融資を展開しています。

 

4.考えられるリスク

 2019年6月期連結営業利益は、米国のメルカリその他の赤字を日本のメルカリの黒字が吸収し、27億円程度の黒字と予想します。しかし、同社は短期的な利益の確保よりもトップラインの成長を最重要視しているとみられます。トップラインの成長が見込めるチャンスと判断すれば積極的に先行投資に動くでしょう。したがって、場合によっては、赤字とはならないと思いますが、営業利益がとんとん程度に収まるリスクがあります。