2.米国のメルカリは早期の黒字化は難しいが、赤字がこれ以上拡大する可能性は低い
a.売上高とのバランスを取った投資
一方、米国のメルカリについては2019年6月期も赤字が続く見込みですが、売上高の推移を見ながらコストをかけていくとみられます。したがって、米国の赤字額は2018年6月期と同水準の80億円程度になるでしょう。
赤字がいつ解消されるかは不透明です。赤字を解消するには多くのユーザーを呼び込み、売買を活性化させる必要があります。しかし、2018年6月期のGMV(Gross Merchandise Volume)は212百万ドル(111円換算で235億円)と、日本のメルカリの3,468億円の7%にとどまっています。なお、日本のメルカリが通期で黒字化した2016年6月期のGMVは1,326億円でした。
イーベイ(ebay)などとの厳しい競争環境を考慮すると、早期の黒字化には大きな困難を伴います。
b.サービス改善中
ただし、早期黒字化の道が閉ざされているわけではありません。米国のメルカリはUIやサービスが着実に改善しており、口コミなどでファンが増えればスピーディーに黒字化する余地があります。米国のメルカリでは以前、カスタマーサポートを米国外に委託していましたが、現在は内製しており、問い合わせに対してよりきめ細やかな対応ができるようになりました。また、アプリのトップ画面では直近の売れ筋商品、閲覧商品、期間限定の割引商品などがわかりやすく表示される仕組みになっており、ユーザーが売買に動く導線を作っています。
c.GMV回復中
こうした施策が寄与して、GMVの伸び率は回復傾向にあります。2017年6月期2Qに10%の手数料の請求を開始した後、GMVは低迷していましたが、それが一巡し、取引が活発化しつつあります。
米国のメルカリのGMV推移(前年同月比増減率)
メルカリが取り組んでいる快適なユーザー体験が他社との差別化につながると考えられますが、その体験をしてもらうためには消費者にメルカリのアプリを立ち上げてもらう必要があります。現地では、メルカリの認知度を高めるべく、ラジオ広告や高速道路付近の看板など、ドライバーをターゲットにした広告宣伝を展開しているようです。メルカリの稼ぎ時はクリスマスの時期(2019年6月期2Q、10-12月期)にあると考えられるため、1Q、2Qにどれだけ売買を活性化できるかが注目されます。