中国サイドでも貿易戦争の影響を試算。中国人民銀行の通貨政策委員を務めるエコノミストは米中間で500億ドル規模の貿易戦争が起きれば、中国のGDP(国内総生産)が0.2%押し下げられるとの試算を示しています。これは7月時点の試算なので、現在の米国による実際の制裁規模はこの5倍に拡大しています。影響度合いも単純に5倍と考えるとGDP は1%になり、IMFの分析に近い数字となります。

 いずれにしろ、中国や米国が1%近くの成長力ダウンとなると、日本や欧州、新興国への経済の影響は計り知れないものとなりそうです。

 

貿易戦争長期化予測で、下落のダウ平均

 先週、高値を更新した米ダウ平均は今週に入って下落しました。

 これは、21日に「ウォール・ストリート・ジャーナル電子版」で、米中閣僚協議再開を中国側が拒否したと報じたことが下落の大きな要因のようです。24日の貿易制裁発動は織り込まれていたため、制裁発動自体よりも9月下旬に再開予定の協議が拒否されたことで、貿易戦争が長引くのではないかという警戒感が一気に広まったようです。

 協議再開拒否の報道を受けて、米中間選挙の結果を見極めるまで、中国は協議を再開しないという見方が浮上しています。もし下院で民主党が過半数を取り、トランプ政権が勢いを失えば、11月の米中首脳会談では何らかの妥協点を見出すことができるのではないかという中国の思惑があるからです。このため、米中貿易戦争は、米中間選挙までに交渉が始まって解決に向かうというシナリオの優先度は低くなってきたようです。

 そして、対立が長期化すればするほど、米国経済への打撃は大きくなってきます。来年後半には減税効果もはがれてくると言われており、2018年は大丈夫という楽観的見通しだけでは投資も細ってくることが予想されます。

 

FOMCの焦点は12月利上げと、2019年の利上げ回数

 このような中で今週24~25日にFOMC(米連邦公開市場委員会)が開催されます。利上げはほぼ織り込まれていますが、今回の注目点は次回12月の利上げ、あるいは2019年の利上げ回数についてどのような見方をするかという点です。

 また、貿易戦争の影響についてFRB(米連邦準備制度理事会)がどのような認識を示すのかという点です。FRBはまだ影響を織り込んでいませんが、ECB(欧州中央銀行)のドラギ総裁は24日の議会証言で米中による報復関税の応酬が欧州経済に与える悪影響について準備する必要があると強調しました。

 今週開催のFOMCでは、FRBも貿易戦争の長期化を重視し、その影響を考慮するような姿勢をにおわせてくるかもしれません。そうなれば、金利低下、株高、ドル安の動きにつながります。

 今週は日米首脳会談だけでなく、貿易戦争の長期化という時間軸が加わったことによって、FOMCの注目度も高まってきたようです。