メルカリの国内ビジネスモデルは強固、高成長が見込まれる

(1)国内ビジネスモデルは強固

 メルカリは先ほど述べた2つのポイントをクリアしています。

  1. ITインフラを支配している
    経済産業省によると、フリマアプリの市場規模は約4,835億円です。このうち約6割を「メルカリ」が占めています。すでに、フリマアプリというITインフラを支配している状態です。競合他社にとって、このシェアを切り崩すことは困難でしょう。高いシェアを誇る「メルカリ」は、中古品を売買したい人にとって、立ち寄るべきスポットとしての地位を確立していると考えられます。
    さらに、「メルカリ」は、単に売買の場所を提供しているだけではなく、SNS的な要素でもユーザーを惹きつけています(後述)。ユーザー参加型のプラットフォームを築いたことにより、「メルカリ」独自の世界観やユーザー体験が生まれています。
     
  2. マネタイズができている(ITインフラを活用して利益を生み出している)
    メルカリは連結ベースでは赤字ですが、主力の国内事業は好調です。連結ベースの2017年6月期(2016年7月~2017年6月)業績は、売上高が221億円(前期比80%増)に拡大したものの、営業損失は28億円の赤字(前期は若干の赤字)、当期純損失は42億円の赤字(前期は約3億円の赤字)に拡大しました。一方、国内事業は、売上高が213億円(前期比74%増)、営業利益36億円(15%増)に成長しました。
    同社の主な収益は、ユーザーが「メルカリ」で売買した代金の10%の手数料です。「メルカリ」で在庫を抱える必要がないので、売買代金が拡大するほど営業利益率も上昇すると見られます。

 

(2)国内は順調に規模を拡大中

 国内は足元も順調に規模が拡大しています。「メルカリ」の累計ダウンロード数は、2018年6月期3Q(2018年1-3月期)時点で7,100万件に到達しています。

日本の四半期累計ダウンロード数
期間:2015年6月期第1四半期(1Q)~2018年6月期第3四半期(3Q)

出所:会社資料より楽天証券が作成

 累計ダウンロード数だけではなく、登録MAU 1件あたりの流通額も堅調に推移しています。登録MAU(マンスリー・アクティブ・ユーザー)とは、「メルカリ」に登録しているユーザーのうち、1カ月に一度以上「メルカリ」を利用したユーザーを指します。ダウンロードしたものの、利用しなくなった人を除くことができるため、ダウンロード件数よりも実質的なユーザー数を測ることができます。そのMAUで流通総額を除したものが次のグラフですが、近年はしっかりと推移していることが分かります。

登録MAU一件あたりの流通額
期間:2015年6月期第1四半期(1Q)~2018年6月期第3四半期(3Q)

※流通総額には「メルカリ カウル」「メルカリ メゾンズ」を経由した購入を含む
出所:会社資料より楽天証券が作成

 

 なお、月間購入UU(ユニークユーザー)という指標も、メルカリの売上高を考える上でポイントになります。MAUはアプリを「利用した」ユーザーですが、UUは1カ月に一度以上、商品などを「購入した」ユーザーを指します。2018年6月期3Qを例にすると、その期間の平均月間購入UUは約310万でした。同じ時期の登録MAUは1,030万(前年同期比43%増)、累計ダウンロード数は7,100万(同48%増)でした。したがって、ダウンロードをしたうちの約4%が、実際に「メルカリ」で商品を購入して同社の売上高に貢献したことになります。

 

(3)国内で成功した理由は、「手軽さ」と「SNS」

 国内でメルカリが勢いよく伸びているのは、中古品マーケットという市場に、スマートフォンの手軽さと、SNSの楽しさを織り交ぜたためです。パソコンのウェブを主体とした中古品のC to Cマーケットといえば、ヤフー(4689)の「ヤクオフ!」が筆頭に挙げられますが、2013年からサービスをスタートしたメルカリは、スマートフォンだからこそできるサービスの手軽さを追求しました。

 出品者は、自分の家にあるいらない物を気軽にスマートフォンで撮影して、すぐに出品できます。手数料体系が「販売額の10%」というシンプルなものなので、あれこれ考える必要もありません。買い手は、いつでも空いた時間に、スマートフォンの画面をスクロールして掘り出し物を探すことが出来ます。この手軽さが、消費者を動かしました。これまで、「いらないものを売りたいけれど手間と時間がかかる」と思っていた層を獲得しました。

 さらにSNS的要素が加わります。出品した商品は、閲覧者から気に入ってもらえると「いいね!」ボタンを押してもらえ、コメントを見ることもできます。この、自分や他人の所有物を軸にしたコミュニケーションが、「メルカリ」アプリを再訪問する一つの動機になっています。アプリ内に滞在する時間も長く、Nielsen Digital Co., Ltd.の調査では、同社のモバイルアプリの月間平均利用時間は5.3時間となり、日本のフェイスブックの4.1時間を上回りました。

 

(4)国内ではさらにユーザーが拡大するだろう

 国内については今後も高い売上高成長が期待できます。40代の女性を中心に潜在的なユーザーを獲得していくとみられます。下の図は、Nielsen Digital Co.,Ltd.が2018年2月に実施したオンライン調査の結果です。その調査によると、各年代のポテンシャルユーザーはまだ相当数残されています。ポテンシャルユーザー数はアクティブユーザー数の2倍強です。

アクティブユーザーの拡大余地

※18歳から59歳までの5,000人を対象にNielsen Digital Co.,Ltd.が2018年2月に実施したオンライン調査に基づく。アクティブユーザ数及びポテンシャルユーザ数は、18歳から59歳までの全スマートフォン利用者数を4,571万人と仮定し、同調査結果を拡大推計することにより計算された推計値
※アクティブユーザーとは同調査において、1カ月以内にメルカリを利用したと回答した個人
※ポテンシャルユーザーとは同調査において、メルカリを知っているが過去1カ月以内にメルカリを利用しておらず、機能・サービスの改善・追加次第ではメルカリを利用したいと回答した個人
出所:会社資料より楽天証券が作成

 

(5)特に親世代のユーザー獲得に期待

 ポテンシャルユーザーを全て獲得することは考えにくいのですが、各年代に沿ったマーケティングを訴求できれば、ポテンシャルユーザーの多くを取り込んでいくことは可能でしょう。子供の影響を受けて親世代にも広がっていったフェイスブック(FB)のように、「メルカリ」も親世代が徐々に参加していくとみられます。タグの自動化(出品物が何であるか自分で書き込まなくても、画像から自動的に判断される)や不正出品者の検知が進めば、より多くの世代に受け入れられるでしょう。親世代が本格的に参入することにより、趣味で集めていたものの出品が増えて、売買単価も上昇していくと考えられます。