投資の勉強の代わりに「毎月積み立て」を始める

篠田: ここまでファンドマネージャーのみなさんのお話しをうかがってきて感じたことは、投資家は勉強をして専門家を目指すべきなのかと言うことです。もちろんそれは無理なので、どの程度のことまで知っていれば、投資と上手に付き合っていけるのでしょうか。

藤野: 投資の極意を知らなければ投資ができないなどということはありません。車の運転に例えれば、多くのドライバーは内燃機関の構造を詳しく知らずに運転していると思います。それでいいのです。

篠田: では初心者が初めて投資をする時にやるべきことは?

藤野:「毎月積み立て」です。

篠田: それはなぜでしょう?

藤野: 買った値段である「簿価」をいい意味で忘れられるからです。多くの人がやりがちなのは、簿価を追いすぎてしまうこと。簿価に対して基準価額が上がった下がったと一喜一憂することです。簿価は投資家側の都合であり、マーケットは一人ひとりの簿価を気にして値段をつけているわけではありませんからね。
投資家デビューしたら、時価で考えるようにしてください。それは100万円で買った株が80万円に下がったら、今の時点で80万円が高いのか安いのかと考えるということ。でももしかしたら時価ですら考える必要もなくて、とりあえずは少額ずつ投信積み立てを続けて相場を見ないことこそが、初心者がやるべきことかも知れない。

篠田: できる人は少ないですね。

藤野: だからこそ私たちのような専門家が、投資家の皆さまに代わって365日、マーケットやファンドに目を配っているのです。投信の魅力は皆さんが毎日考えないで済むというところだと思います。

篠田: 投資と聞くと難しく思いがちですが、良いファンドを選んで、積み立てで買う。後はプロにお任せする……投資は難しくないことが初心者のみなさんにお伝えできたと思います。ありがとうございました。

 

〔特別対談〕レオス藤野×スパークス武田×アセマネone酒井:強い個人投資家になるために必要なこと
前編:強い個人投資家になるために必要なこと
中編:投資信託は日本人の将来生活の味方か敵か?
後編:みんなが投資の専門家になるべき?
まとめ:ひふみ投信×スパークス×アセマネoneの最強ファンドマネージャーがガチ対決!?

〔教えてくれたのは〕

藤野英人(ふじの・ひでと)
レオス・キャピタルワークス 代表取締役社長 最高投資責任者
1990年、野村投資顧問(現野村アセットマネジメント)に入社。ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントなどを経て、03年レオス・キャピタルワークスを設立。08年に「ひふみ投信」を立ち上げる。

武田政和(たけだ・まさかず)
スパークス・アセット・マネジメント ファンド・マネージャー
1996年、日本長期信用銀行(現新生銀行)に入行。1998年、長銀ウォーバーグ証券(現UBS証券)に出向。1999年、スパークス・アセット・マネジメント入社し、「新・国際優良日本株ファンド(愛称:厳選投資)」 の運用チームに所属。

酒井義隆(さかい・よしたか)
アセットマネジメントOne
運用本部 株式運用グループ 国内株式担当 ファンドマネジャー
2004年、興銀第一ライフ・アセットマネジメント(現アセットマネジメントOne)に入社。2005年よりファンドマネジャーとして国内株式運用などを担当

〔聞き手〕
篠田尚子(しのだ・しょうこ)
楽天証券経済研究所ファンドアナリスト


 

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