下落「第3波」からの戻りを試す日経平均

 先週の日経平均株価は、1週間で113円上昇し、2万1,567円となりました。下値支持線として意識されている200日移動平均線をキープしていることが安心感につながっています。ただ、気になるのは、米中貿易戦争が泥沼化するリスクが出ていること。そして、米国株の戻りが鈍いことです。

日経平均日足:2017年12月1日~2018年4月6日

 

<参考>下落「第1波」「第2波」「第3波」

 下落第1波は、2月2日発表の1月米雇用統計がきっかけ。平均賃金上昇率が高く、米利上げが加速する懸念が生じ、世界的に株が急落。下落第2波は、3月1日に、トランプ米大統領が、鉄とアルミに輸入関税を課す方針を表明したことがきっかけ。第3波は、3月22日、トランプ大統領が、知的財産権侵害を理由に、対中制裁を決定したことがきっかけ。貿易戦争激化の懸念で世界的に株が下落。

 

NYダウ、ナスダックの戻りは鈍い

 下落第3波から、日経平均の戻りが大きいのに対し、米国株の戻りは鈍くなっています。

過去2週間の日経平均・NYダウ・米ナスダック株価指数の騰落率

注:▲はマイナスを示す。配当落ちを勘案せず、指数の騰落率のみ示している

NYダウ日足:2017年12月1日~2018年4月6日

 

米ナスダック株価指数日足:2017年12月1日~2018年4月6日

 

 

米国株の上値を抑える2つの弱材料

 下落第1波・第2波からの戻りが順調だった米国株ですが、第3波で大きく下げた後の戻りは鈍くなっています。これには2つの理由があります。

1.米中貿易戦争が泥沼化するリスク

 4月3日、米国は25%の関税をかける中国からの輸入品500億ドル(約5兆3,500億円)の具体的品目(原案)を発表しました。産業用ロボットなどの1,300品目が選ばれました。

 これに対し、4月4日、中国は、すかさず対抗策を発表しました。米国からの輸入品106品目(大豆・自動車など)で、同額の500億ドルに対し、同じ25%の関税を課すとしました。

 4月5日、トランプ大統領はさらに中国への制裁をエスカレートさせる姿勢を示しました。中国からの輸入品で、さらに1,000億ドル(約10兆7,000億円)に追加で関税を課すことを検討するように指示しました。中国は、これに対し、「米国が新たな関税追加を発表すれば、中国も迷わず反撃する」と表明しています。

 11月に中間選挙を控えるトランプ政権も、独裁を強める習近平政権も、ともに交渉で弱みを見せるわけにはいかず、貿易戦争が泥沼化するリスクが意識されています。

 

2.米IT大手へのバッシングが先鋭化

 フェイスブック・ショック【注】から始まった米IT大手へのバッシングが、先鋭化しています。世界を支配するIT大手企業(フェイスブック・アマゾン・ネットフリックス・アルファベット(グーグルの持株会社))の構成比が高い米ナスダック株価指数の、下落が続いています。トランプ大統領がアマゾンに対し、独自の課税を検討と発言したことも、IT大手への逆風となっています。

【注】フェイスブック・ショック

 3月16日、「フェイスブックの利用者5,000万人のデータを、英コンサルティング会社が不正に取得し、2016年の米大統領選でトランプ陣営に有利に働くように活用した」と報道があってから、米国でフェイスブックへの批判が強まっています。利用者に「フェイスブックのアプリを消そう」との運動が広がり、フェイスブックへの広告出稿を見合わせる企業も増えています。フェイスブックやグーグルなど、大量の個人データを活用して高収益をあげている企業に対し、かねてより情報独占や情報管理の甘さに対し、批判がありました。批判はさらに先鋭化し、米国や欧州で米IT大手に課徴金をかけるべきとの意見も出ています。

 

日経平均は長期投資で買い場と判断。ただし、短期的な波乱は続きそう

 日経平均は、長期投資の観点から、「買い場」との判断は変わりません。ただし、短期的には、まだ下値リスクも残っています。押し目で、積極的に買っていったら良いと考えています。世界的な株安「第3波」を生じた複合ショックは、まだ解決していません。

下落第3波を生じた5つの弱材料:足元の状況

1.米中貿易戦争の懸念

 泥沼化するか、収束に向かうか、まだわからない。

2.米IT大手へのバッシング

 フェイスブックやグーグルなど米IT大手への批判が広がっている。アマゾンに独自の課税を検討していると、トランプ大統領が表明したことも逆風。

3.円高

 1ドル107円前後まで円安が進み、円高の不安がやや低下。

4.米金利上昇

 今年さらに2回の利上げが見込まれる状況に変化なし。

5.日米の政治不安

 トランプ大統領の支持率はやや回復。日本の政治混迷は継続。

 

 

 

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