米国株は戻りが大きいが、日経平均は戻りが鈍い

 先週の日経平均は、1週間で288円上がり、2万1,469円となりました。NYダウの反発を好感し、株安「第2波」からの戻りを試しました。ただし、NYダウや米ナスダック株価指数に比べると、日本株の反発力は弱かったと言えます。

日経平均日足:2017年11月1日~2018年3月9日

 
 

NYダウ日足:2017年11月1日~2018年3月9日

 

 今回の反発を主導しているのは、IT関連株です。IT・ハイテク株の比率が高い、米ナスダック株価指数は、NYダウよりも戻りが速く、先週、最高値を更新しています。
 

米ナスダック株価指数日足:2017年11月1日~2018年3月9日


 

先週出た強弱材料を整理

 下落第一波は、2月2日発表の1月の米雇用統計がきっかけとなりました。平均賃金上昇率が、前月比0.3%(前年比2.9%)も伸びていたことから、インフレが高まり、利上げが加速する懸念が生じ、NYダウの下落第一波を引き起こしました。

 下落第二波は、3月1日に、トランプ米大統領が、鉄鋼とアルミニウムに輸入関税を課す方針を表明したことから、起こりました。米中貿易戦争が起こる懸念が生じ、NYダウが再び急落しました。先週は、それに加え、新たな強弱材料がいろいろ出ました。

◆3月7日:米国のゲーリー・コーン国家経済会議委員長が辞任を表明
 トランプ大統領が鉄鋼とアルミニウムに輸入関税をかける方針を表明したことに反対していたコーン氏の辞任表明で、関税導入が近いと見られ、不安が広がりました。

◆3月8日:トランプ大統領が鉄鋼とアルミニウムにそれぞれ25%、10%の関税をかける大統領令に署名
 世界各国から、WTO提訴や、報復関税の導入などの対抗策を取ることが、表明されました。ただ、鉄とアルミへの関税は、影響が大きいカナダとメキシコには当面適用しないとしました。また、友好国は交渉次第では適用除外にするとしました。実質骨抜きになるのでは、との思惑も出ています。

◆3月9日:トランプ大統領が、北朝鮮の金正恩委員長との会談に応じる意向を表明
 北朝鮮は、非核化に応じる方針も表明しています。朝鮮半島をめぐる地政学リスクが急速に低下したと見なされ、世界的な株高につながりました。ただし、本当に、北朝鮮が非核化に応じるのか、朝鮮半島有事のリスクが取り除かれたと考えるのは、時期尚早かもしれません。

◆3月9日:米労働省が2月の米雇用統計を発表。平均賃金の伸びは鈍化も、非農業部門雇用者数が、前月比31.3万人の増加とポジティブ・サプライズ(強くて驚き)
 注目の平均賃金の伸び率は、前月比0.1%に鈍化しました。ただし、非農業部門雇用者数は、前月比31.3万人増加し、事前の市場予想(20.5万人増)を大幅に上回りました。賃金の伸びの落ち着きと、強い雇用者増加数を好感し、NYダウ・ナスダック株価指数とも、大きく上昇しました。ナスダックは、史上最高値を更新。

円高で、来期業績に警戒シグナル

 米国株の戻りが大きいのに、日本株の上値が重いのには、2つの理由があります。

◆来期(2019年3月期)の業績伸び率が大幅に鈍化

 今期(2018年3月期)の業績は非常に好調ですが、1ドル=106円を前提とすると、以下の通り、来期の業績の伸びが大幅に鈍化する見込みです。

東証一部上場3月期決算、主要841社の連結純利益(前期比)

出所:楽天証券経済研究所が作成


 ◆製造業からITなど非製造業へ乗り換える動きが広がっている

 現在、世界的に、製造業の先行きに不安が増えています。製造業の比率が高い日本株の比率を落とし、IT関連株などの比率が高い米国株を買い戻す動きが出ています。

 今週の日経平均は、2万1,000円台で一進一退と考えられます。週初は、米国株の強さを好感し、上昇して始まることが予想されますが、その後、上値が重くなるとみています。円高の不安が残る間は、上値が重いと見ています。

 

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