(2)日銀が買い支える日本株は、売りか?

結論から言うと、私は売りとは考えません。押し目では、配当利回りの高い大型株を中心に買い増しを考えてよいと思います。

「日銀がETFの大量買いを実施していなければ、日経平均は今15,000円くらいだった」という人がいますが、私はそれにも賛成しません。日銀がETFを買っていなければ、日経平均は一度大きく下がっていたと思いますが、その後、急反発して17,000円近辺に戻ってきていると思います。

なぜならば、日本株をめぐる投資環境が最近、改善してきているからです。日本株の上昇に、日銀のETF買いが一定の影響力を及ぼしたとことは間違いありませんが、それだけで日本株が上昇しているとは、思いません。以下3点も、日本株の上昇に大きく寄与したと考えています。

  • 日本株を取り巻く投資環境が改善していること。
  • 急激な円高が進んだ割りには日本の企業業績が堅調であること。
  • 日本株(特に大型株)が配当利回りなど株価指標で見て割安と考えられること。

投資環境についての議論は、別の機会にするとして、今日は日銀のETF買いが日本株の需給に及ぼしている影響に焦点をしぼって、書きます。

(3)日銀のETF買いによって、日本株の需給が改善している

日銀のETF買いで日本株の需給が改善していることに、注目しています。具体的に言うと、日銀のETF買いに誘発されて、外国人投資家が、日本株を大量に売ってしまったことに注目しています。

9月に日銀はETFを8,303億円買い付けていますが、外国人投資家が1兆1,224億円も日本株を売り越しています。日銀が買い支えることによって、外国人の売りを呼び込んだと考えられます。日銀のETF買いは、外国人の株式保有を大幅に削減する効果がありました。

外国人投資家は、これまで日本株の動きを支配してきました。外国人は売るときは下値を叩いて売り、買う時は上値を追って買ってくる傾向があるからです。その外国人投資家の日本株保有が今、大きく減少しています。これは、需給にプラスです。

詳しい説明は割愛しますが、裁定買い残高がリーマンショック時と同水準まで低下していることにも注目しています。

日経平均と裁定買い残の推移:2006年4月―2016年10月12日

(出所:東証データより楽天証券経済研究所が作成)

裁定買い残高は、主に外国人投資家の先物などによる投機的買いポジションの変動を示しています。外国人の買いポジションは、先物で見ると、リーマンショック時のころと同じくらい減っているということを示しています。日銀のETF買いに誘発されて、先物も含めて日本株の保有をどんどん減らしていったことがわかります。

外国人の保有が減ったことにより、日本株が突然、外国人投資家の強烈な売りによって急落するリスクは低くなっているといえます。ここから、まだ突発的な悪材料が出ることもあると思いますが、リスクに対して、日本株は耐性が出てくると思います。

去年は、原油価格急落で、産油国から日本株に大量の売りが出たことも、記憶に新しいところです。原油価格の反発によって、産油国の売りが出にくくなっていることも、需給面でプラスです。

ただし、日経平均の一本調子の上昇はまだ期待できる状況ではありません。一段と上値をとっていくためには、外国人が日本株を積極的に買う姿勢に転じることが必要です。今はまだ、外国人は日本株を積極的に買う姿勢になく、市場の売買高が低迷しています。日経平均は徐々に下値を切り上げていくと思いますが、しばらくは上値の重い状況が変わらないと思います。

(4)日銀が日本株ETFを売らなければならなくなるのは、遠い将来

中央銀行が、日本株をどんどん買っていくのは、きわめて異例です。将来、日銀が日本株を売らなければならない日が来ることを考えると、不安が募ります。ただし、今、遠い将来の日銀の売りのことを今考えるのは、時期尚早です。短期的な相場予測を考える際には、日銀は、引き続き強力な買い手という位置づけが続きます。