FRBの利下げがもたらす影響を確認してみる

 目先の「局面」について、考えます。FRB(米連邦準備制度理事会)が、いよいよ利下げに踏み切ろうとしています。この利下げは、「代替通貨(ドルとの逆相関)」起因の上昇圧力をもたらし得る材料です。

 以下の図の右側の「利下げ局面」に書いたとおり、利下げ(ドル安)は、ドル建て金(ゴールド)相場に代替通貨起因の上昇圧力をかけます(A)。

図:金(ゴールド)の「局面」に関わる短中期のテーマの動向

出所:筆者作成

 同時に利下げは、個人や企業の資金調達を促し、景気回復・株価上昇の要因になり得ます。この点は、金(ゴールド)相場に代替資産起因の下落圧力をかけます(C)。そして、同時進行しているウクライナ戦争の悪化、中東情勢のさらなる混迷をきっかけとした有事ムードの高まりが上昇圧力を継続させます(B)。

 AとBの上昇圧力が、Cの下落圧力をかき消し、金(ゴールド)は上昇する可能性があります。この時、円建て金(ゴールド)は、円高によって上値を抑えられやすくなりますが、急激な円高が発生しなければ、ドル建てに追随して上昇する可能性があると考えられます(上昇率はドル建てに及ばない)。

 つまり、目先は米国の利下げがきっかけで「株高・金(ゴールド)高」が目立つ可能性があります。以下の通り、株式や通貨、債券、コモディティ(国際商品)など、幅広い市場において、最も大きな関心事が「金融政策(特にFRBによる政策)」である場合は、順相関が発生します。

 実際、リーマンショックやコロナショックの直後に行われた金融緩和の際、「株高・金(ゴールド)高」が発生しました。

図:株と金(ゴールド)の値動きの関係

出所:筆者作成

 過去の常識は「局面」の中で生きているものの、状況によっては常識のとおりにならないケースがあることに留意が必要です。