金(ゴールド)と一線を画すプラチナに注目

 では具体的に、長期低迷銘柄には、どのようなものがあるのでしょうか。以下のグラフの通り、歴史的高値圏で推移する人気の金(ゴールド)と対照的なプラチナです。

図:プラチナと金(ゴールド)の国際価格 単位:ドル/トロイオンス

出所:LBMAのデータをもとに筆者作成

 同じ貴金属の金(ゴールド)の急騰劇を横目に2015年から長期的な低迷を演じているのは、同年に発覚したフォルクスワーゲン問題がきっかけ広がったディーゼル車への批判によって、プラチナの主要な用途である自動車排ガス浄化装置向けの需要が急減するとの思惑が広がったためだと、考えられます。

 同年以降、プラチナは「長期低迷銘柄」になり、明確に金(ゴールド)と色分けがなされてしまいましたが、かえってこのことが、プラチナを投資の際の恐怖を低減する策にしたとも言えます。さらに注目したいのが、フォルクスワーゲン問題発覚時にやり玉に挙がった、自動車排ガス浄化装置向け需要の推移です。

図:プラチナの自動車排ガス浄化装置向け需要の推移 単位:千オンス

出所:World Platinum Investment Councilのデータをもとに筆者作成

 上のグラフの通り、2023年は問題が発覚した2015年とほぼ同等、2024年は2015年を上回る予想が出ています。コロナショックの際に一時的に減少したことや、問題発覚の影響で欧州での減少が見られましたが、近年は北米、中国、インドでの同需要の増加が目立っています。

 増加の背景については、電気自動車の影響が及びにくい大型車(トラックやバス)の排ガス浄化装置向け需要が増えていること、北米や欧州の一部でハイブリッド車への回帰が起きていること、世界各国で排ガス規制が年々強化され、自動車一台当たりに使われる排ガス浄化装置向けの需要が増えたこと(浄化装置の機能向上を背景とした需要増加)などが考えられます。

 もうほとんど、プラチナはフォルクスワーゲン問題の呪縛から解放された、さらに言えば、ようやく、長期視点の価格反発の地合いが整った、と言えるでしょう。