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著者の土信田 雅之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
今週の日本株 米株市場と為替市場のはざまで ~米エヌビディア決算が分水嶺か~

 先週末8月23日(金)の日経平均株価は3万8,364円で取引を終えました。前週末終値(3万8,062円)からは302円高、週間ベースでも2週連続の上昇となっています。

 3万8,000円台に乗せてからの上値は重たさも感じられ、前週の戻り幅(3,037円)と比べると、かなり勢いは弱まっている印象ですが、下値は意外にもしっかり切り上げていて、全体的に戻り基調は続けていると言えます。

 ただし、今週もこのまま戻り基調を続けられるかについては、イマイチ自信が持ちにくい状況でもあります。

 というのも、注目されていた23日(金)のジャクソンホール会議(カンザス連銀主催の経済シンポジウム)でのパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長の講演が、市場の予想通り、9月FOMC(米連邦公開市場委員会)での利下げ開始をほぼ決定づけるような内容だったことで、米国株市場の主要株価指数が揃って上昇しました。

 一方、為替市場では円高ドル安に振れており、こうした動きを受けた日経225先物取引の終値が、大阪取引所で3万8,280円、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)で3万8,300円となるなど、為替市場が微妙に足を引っ張る格好となっています。

 8月の最終週となる今週は、28日(水)に米半導体大手企業のエヌビディア(NVDA)が決算を発表するほか、週末の30日(金)にはFRBが金融政策の判断材料として注目する7月個人消費支出(PCE)が公表されるスケジュールとなっており、今週の国内株市場は、為替とエヌビディア決算をにらみながらの展開が予想されます。

3万8,000円台の攻防となった日経平均。上値トライのハードルは変わらず

 まずはいつもの通り、先週の日経平均の値動きから確認していきます。

図1 日経平均(日足)の動き(2024年8月23日時点)

出所:MARKETSPEEDIIを基に筆者作成

 上の図1や冒頭でも述べた通り、先週の日経平均は週を通じて3万8,000円台を挟んだ値動きが続いたわけですが、ローソク足では陽線(終値が始値よりも高い線)の方が多くなっているだけでなく、5日移動平均線よりも上の位置をキープしていたこともあり、相場の足取り自体は意外としっかりしていました。

 また、今後の日経平均が上値を試すのに超えるべきハードルは、図1の75日移動平均線をはじめ、引き続き前回のレポートでも指摘していた週足チャートの13週もしくは26週移動平均線であることに変わりありません(下の図2)。

図2 日経平均(週足)の動き(2024年8月23日時点)

出所:MARKETSPEEDIIを基に筆者作成

 上の図2を見ると、足元の日経平均がこれらの移動平均線に届くまで「あと少しの距離」と言えるところまで迫っていることが分かりますが、先週の東証プライム市場の売買代金は週初の19日(月)こそ4兆円台だったものの、以降は週末までずっと3兆円台にとどまっており、売買が盛り上がりに欠けていたため、移動平均線の上抜けを積極的にトライするほどの勢いが出てこなかったと思われます(下の図3)。

図3 東証プライム市場の売買代金と騰落銘柄数

出所:取引所データを基に筆者作成

先週の米国株市場はパウエルFRB議長の講演を好感。だが気になるサインも

「戻り基調ではあるものの、力強さがイマイチ感じられない」日本株に対して、順調に戻りを進めていていたのが米国株です。

図4 日米の主要株価指数の「戻り」の状況(2024年8月23日時点)

出所:MARKETSPEEDIIデータを基に筆者作成

 上の図4にもあるように、日米の主要株価指数の直近高値から安値までの下げ幅に対する「戻り率」の状況を確認すると、日本株よりも米国株の戻り率が高くなっているほか、とりわけNYダウとS&P500については下げ幅の9割以上も戻しており、直近高値へのキャッチアップや、さらにその先の高値更新の期待も感じさせているようにも見えます。

 とはいえ、気掛かりな点がないというわけでもありません。S&P500とNASDAQの日足チャートを見ると、週末にかけての3日間のローソク足の並びが、22日(木)の大きめの陰線を中心に、前日の21日(水)とでは「包み足(抱き線)」、翌23日(金)とでは「はらみ足」となっています。

 包み足とはらみ足はともに「天井をつける際に現れやすい形」とされているため、一応注意しておく必要があります(下の図5と図6)。

図5 米S&P500(日足)の動き(2024年8月23日時点)

出所:MARKETSPEEDIIを基に筆者作成

図6 米NASDAQ(日足)の動き(2024年8月23日時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを基に筆者作成

 そもそも、9月の米FOMCで利下げを実施する見通しであったことは、株価が急落する前と変わっていません。すでに前提として織り込んでいた材料で高値を更新するのは無理があります。

「9月の次の利下げ」、もしくは「9月の利下げ幅の拡大(0.25%から0.5%)」などが意識されているのかもしれませんが、継続的な株価上昇にはさらなるポジティブな材料が欲しいところです。