はじめに

 今回のアンケート調査は、2024年7月29日(月)~31日(水)にかけて実施しました。

 アンケート期間終了日の7月末の日経平均株価は3万9,101円で取引を終えました。前月末終値(3万9,583円)からは482円安と、月末の終値同士の比較では、株価水準をやや切り下げた格好ですが、月間の値幅(高値と安値の差)は4,800円を超えていて、値動きはかなり荒かったと言えます。

 実際に7月の相場展開を振り返ると、月初からの日経平均は上値をトライする動きとなりました。

 FRB(米連邦準備制度理事会)が9月にも利下げを開始するとの見方が強まり、半導体関連株や大手テック株などが上昇、日本株もその流れに乗る格好となったほか、日米の金利差縮小見通しの中でも、為替市場では円安ドル高が進んでいたことも追い風となりました。日経平均は7月11日に4万2,000円の大台に乗せ、3月以来の最高値を更新する場面もありました。

 しかし、その後は下落基調へと転じました。米共和党の大統領候補のトランプ氏が銃撃される事件が起こり、選挙戦を有利に進める見方が強まりました。

 そして、同氏の政策姿勢をめぐる「トランプ・トレード」の流れとなり、日本円や人民元に対するドル高を懸念する発言をきっかけに、為替市場が円高方向へとかじを切ったことで、利益確定をはじめとする売りに押される場面が目立ち始め、さらに、日米の金融政策イベントが月末に控えていたことも株価上昇を抑える要因となりました。

 このような中で行われた今回のアンケートですが、2,400名を超える個人投資家からの回答を頂きました。

 日経平均の見通しDIは、3カ月先が株高見通しを強めたものの、1カ月先については見通しが後退したほか、為替のDIについては、ドル/円、ユーロ/円、豪ドル/円のいずれも円高見通しを強める結果となりました。

 次回もぜひ、本アンケートにご協力をお願いいたします。

日経平均の見通し

「中期的な見通しの変化に注意」

楽天証券経済研究所 シニアマーケットアナリスト 土信田 雅之

 今回調査における日経平均の見通しDIは1カ月先がマイナス9.18、3カ月先は+12.51となりました。前回調査の結果がそれぞれマイナス3.95と+5.88でしたので、1カ月先は見通しが悪化、3カ月先は株高の見通しが強まったことになります。

 7月の日経平均は最高値を更新した後、月末にかけて下落基調をたどっていたこともあり、今回のDIの結果からは、「目先は調整局面が続くかもしれないが、中期的な株高基調は変わらない」という様子がうかがえます。

 実際に、3カ月先の回答の内訳グラフを見ても、強気派の割合が34.59%と前回(29.72%)よりも増え、弱気派も前回の23.84%から22.08%へと減少しています。

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成
※四捨五入の関係で合計が100にならない場合がある
出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成
※四捨五入の関係で合計が100にならない場合がある

 ただし、8月相場を迎えた日経平均は歴史的な急落から始まったことで、今回のDIが描いていたシナリオは修正を迫られることとなりました。

 月初からの3日間の下げ幅を終値ベースで確認していくと、1日(木)が975円安、2日(金)が2,216円安、5日(月)が4,451円安と、合計で7,600円を超え、インパクトの強い株価下落となっています。とりわけ、5日(月)の下げ幅は、1987年のブラックマンデー時の下げ幅を超えており、市場の一部からは「令和のブラックマンデー」という声も出ています。

 こうした株価の急落の要因としては、為替市場での円高が進行し、円キャリートレードの巻き戻しや国内輸出関連企業への業績下押し懸念が高まったこと、株価下落そのものが信用取引や先物取引の建玉の維持率悪化を招き、大量の追証発生とその解消が加速したこと、短期筋による売り崩しの動きなどが挙げられています。

 しかし、ここにきて、米国で景気後退への警戒感が浮上してきたことも注目されています。

 とはいえ、米国の景気については、確かに景気減速の兆候はあるものの、現在進行形で景気の悪化が進んでいるわけではなく、9月に米国が利下げを開始する見込みも変わっていません。

 注意が必要なのは、「経済データを確認しながら予定調和的に利下げを実施し、景気もソフトランディングしていく」というこれまでの見方から、「想定以上に景気が後退してしまい、FRBが利下げに迫られるかもしれない」という見方へと、同じ利下げ実施でも相場の視点が変化していることです。

 今後の株式市場は少なくともこれまでのような上昇パターンの再来は難しくなったと考えられ、経済指標や企業業績などの結果に一喜一憂しながら、実際の景気後退の進行度合いやスピード感を探りつつ、株式市場が先走って急落したことに対する「答え合わせ」をしていくことになりそうです。

今月の質問「パリオリンピック、あなたが注目した競技は!?」

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト 吉田 哲

 ここからは、テーマを決めて行っている「今月の質問」について書きます。7月のテーマは「パリオリンピック、あなたが注目した競技は!?」でした。

 質問1では、パリオリンピック(2024年)で日本人選手がいくつ金メダルを獲得できると思うかを尋ねました。参考情報として、ロンドン大会(2012年)が7個、リオデジャネイロ大会(2016年)が12個、東京大会(2020年)が27個だったことを記した上で、六つの選択肢から選んでいただきました。

質問1:パリオリンピック(2024年)で日本人選手は、いくつ金メダルを獲得すると思いますか?

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成
※四捨五入の関係で合計が100にならない場合がある

 最も多くの人が選択したのが12個~26個(38.3%)でした。次いで7個~11個(36.2%)、わからない(12.7%)でした。12個~26個は、リオデジャネイロ大会と同じかそれよりも多く、かつ東京大会よりは少なくなるという選択肢で、7個~11個はロンドン大会と同じかそれよりも多くなるという選択肢でした。

 8月7日時点で12個と、リオデジャネイロ大会と同じ数を獲得しています。11日の大会終了まで主要な競技が残っているため、リオデジャネイロ大会より多くなる可能性もあります。

 質問2では、最も注目している競技について尋ねました。

質問2:パリオリンピックで最も注目している競技を教えてください(複数選択可)

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成
※四捨五入の関係で合計が100にならない場合がある

 最も多く選択されたのが、「柔道」(12.4%)、次いで「サッカー」(11.5%)、「バレーボール」(8.5%)でした。柔道やサッカーは、アンケート調査の実施期間に競技が開催されていたこともあり、より多くの注目を集めたのかもしれません。

 また、東京大会(2020年)からオリンピックの競技となった「スケートボード」(6.0%)や、今回のパリ大会から採用されたダンススポーツの「ブレイキン」(5.9%)など、オリンピックとして新しい競技も比較的多くの注目を集めました。

 質問3は、「オリンピック関連で注目できそうな株や業界はありますか?」として、今回の大会がどのような点で経済的な影響がありそうかを尋ねました。(128文字以内で自由記入)

 旅行業界やスポーツ業界、メディア業界、家電業界などに好影響があるのではないか? 有力選手が活躍した場合、その選手が所属する企業の株価が上昇するのではないか? 選手が使用するユニフォームやシューズなどを手掛ける企業に注目している、といった趣旨のコメントがありました。

 また、撮影用のドローンや、バレーボールでラインにかかるボールのイン・アウトの判定機器、赤外線を通さないユニフォーム、SNSの監視など、新しい技術が導入されていることに関心を示した方もいました。

 今大会では採用が見送られた「eスポーツ(エレクトロニック・スポーツの略で、コンピューターゲームなどを使って行うスポーツ競技)」が、将来的にオリンピックの競技になることを期待するコメントもありました。

 ここまで、「パリオリンピック、あなたが注目した競技は!?」というテーマで行った各種質問の回答結果をまとめました。今後もさまざまなテーマを用意し、個人投資家の皆さまのお考えを伝えていきます。