日銀の7月の利上げ観測は後退、利上げタイミングは難題に

 今回の「為替介入」が日銀に与える影響については、二つの相反する見方が考えられます。

 一つ目は「為替介入」によって円安が修正されるため、日銀が利上げを急ぐ必要性が低下するとの見方です。

 二つ目は政府の「為替介入」に日銀も歩調を合わせて、早急に利上げを進めなければならなくなるとの見方で、政府は日銀に早期の利上げを催促したとも受け取れます。そのように思わせるドルの「押し下げ介入」ということです。

 日銀は7月30~31日の金融政策決定会合では、国債買い入れの今後1~2年程度の具体的な減額計画を決定する予定ですが、相応の規模になるのかどうか注目です。また、7月の利上げ観測は後退した感じですが、政府の「介入」と歩調を合わせるのかどうか、また今回利上げがなくても、次回の利上げへの期待を高めるような状況説明をするのかどうかが焦点です。

 IMF(国際通貨基金)の7月の経済見通しで日本の2024年の成長率は0.7%と、前回4月から0.2%の下方修正となりました。1-3月期のマイナス成長が影響しているとのことですが、経済回復が遅れた場合、早期の利上げは可能なのかどうか注目です。

 政府の「介入」は日銀の利上げを催促する意味合いもあるのではないかと先述しましたが、逆に利上げ時期が遅れるのではないかとの判断が働き、積極的なドルの「押し下げ介入」を実行したとの解釈もできるかもしれません。いずれにしろ、日銀の利上げタイミングの判断はFRBの利下げタイミングよりもかなり難しい局面になってきたようです。

 日銀会合での注目点がことごとく期待外れの場合は失望感からの円売りが予想されますが、31日の深夜にはFOMCの決定を控えているため、円売りも限定的な動きになりそうです。

トランプ氏復権での財政拡大期待がドル高要因になるも、1ドル=160円の円安ドル高遠のく

 一方で、トランプ前米大統領の狙撃事件によって、大統領選でトランプ氏勝利との見方が高まり、市場では財政拡大期待のトランプ・トレード(金利高[米国債売り]、ドル高、株高)が動き始めています。

 このドル高と日本の介入警戒・米利下げ期待によるドル売りとの綱引きのような動きとなっていますが、「為替介入」・米利下げ期待を背景としたドル売り・円高の方が勝りそうな気配です。

 また、トランプ氏の通商政策で関税引き上げと同時に留意しなければいけないのは、対米貿易黒字国の通貨政策を批判してくる可能性があるということです。日本は、米財務省の6月の為替報告書で、大幅な対米貿易黒字と多額の経常黒字であることから監視リストに加えられました。トランプ氏は対米黒字国の日本の円安を批判してくることが予想されます。

 トランプ・トレードでドル高になっても、その後は日米貿易不均衡に焦点が移り、日本円は別の動きをするかもしれないため、注意する必要がありそうです。トランプ氏は16日、「トランプノミクスは低金利と関税」と発言しています。この発言を受けて米長期金利は低下していますが、市場は今後も素直に反応するのかどうか注目です。

 ドル/円の水準は米CPI公表と「介入」によって、1ドル=161円台半ばから158円前後まで切り下がった状況となっています。介入警戒と連続利下げへの期待の高まりから160円以上の円安に挑むのは難しくなってきたかもしれません。

 しかし、介入が続かなければ、7月30~31日の日銀会合まで円高にも大きく動かないかもしれません。大きく動かないのであれば、円売りポジションを積み上げやすくなるかもしれませんが、介入を警戒しながらの円売りは迫力がないかもしれません。