【スペシャル対談】
日興アセットマネジメント有賀潤一郎 
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楽天証券経済研究所篠田尚子

【前編】S&P500+金は、半分ずつ持つのでは意味がない?
【後編】投資信託の「レバレッジ」はリターンと分散、どっちに使うのが正解?

工夫次第で資産運用を効率化できるレバレッジ型投信

 最近、話題を呼んでいる投資信託が、株価指数の2倍程度の値動きが生まれるように設計されたレバレッジ型のインデックスファンドです。

 対象指数の日々の値動きの2倍となるように設計され、運用されるファンドです。例えば、インデックスの終値が3日連続で10%ずつ上がれば、1.1×1.1×1.1=1.331。一方、2倍のレバレッジ型は1.2×1.2×1.2=1.728。複利効果で、シンプルなインデックスの2倍以上、上昇します。一方で横ばい相場が続くと仕組み上、基準価額が下落しやすいという弱点も指摘されます。

 一方、そのメリットは、元手の2倍を投資することで資金効率が上がること。まだ若くて投資に回せるお金が少ない20代、30代の方でも、少額の資金で高い目標にチャレンジすることができます。また、S&P500種指数と金のように、値動きが異なる傾向にある資産に分散投資すれば、リスク・リターンの効率を高めることも期待できます。

 つまり、同じレバレッジ型投資信託といっても「工夫」が必要だということ。単独の株価指数などに2倍のレバレッジをかけて投資すれば、どうしてもその指数の行方に左右され、時にリスクが過大になりがちです。しかし、工夫された分散を施した上でのレバレッジの活用なら、レバレッジ型の長所をうまく引き出すことも可能なのです。

 インデックスファンドの一歩先を行き、「こんなの欲しかった」と思える独自のパッシブ型投資信託を開発する日興アセットマネジメントの新ブランド「Tracers(トレイサーズ)」には、「グローバル2倍株(地球コンプリート)」(以下、当ファンド)という純資産総額200%相当額に投資を行う株式ファンドもあります。

 その仕組みと使い方を、開発者である日興アセットマネジメント商品開発部部長の有賀潤一郎さん、楽天証券経済研究所の副所長でファンドアナリストの篠田尚子が解説します。

レバレッジ型投信で挑戦的な低コスト

――「トレイサーズ」の「S&P500ゴールドプラス」「グローバル2倍株」はいずれも資産総額の200%相当額を投資する、投資信託ならではの商品設計になっています。資産形成にレバレッジをかけた投資信託を使うことについて、どう思われますか?

篠田 大前提として、レバレッジをかけたときの値動きのメカニズムをきちんと理解できているかどうか、これが重要です。

 例えば、昨年流行した米ナスダック100指数のレバレッジ型ファンドのように、単独の株価指数に2倍のレバレッジをかけたタイプは、自分である程度マーケットの方向感をつかめる方でないと扱いが難しい。一般的なインデックスファンドのように「ほったらかし」にすると、知らず知らずのうちに損失が膨らんでしまう危険性もあります。

 ただし、「Tracers」は従来のレバレッジ型とは異なり、レバレッジをかける投資対象を分散することで、ファンド全体の値動きを緩やかにする効果が期待できるという点に特徴があります。 

――「高いリターンのためだけでなく、分散のためにレバレッジを利用する」という発想ですね。

有賀 資産運用ではさまざまな資産に幅広く投資することが大切です。少額でそれを実現できるのが、投資信託という金融商品の本来の魅力ですよね。

 例えば、限られた資金を低リスクの債券ばかりに投資してしまうと、十分な投資収益を期待できないにもかかわらず、債券がポートフォリオの大部分を占めてしまうことになります。そこで、レバレッジを活用することで、少ない資産で効率的に複数の資産に幅広く分散投資を行います。

 レバレッジにはハイリスク・ハイリターンのイメージが付きまといがちですが、「分散のためのレバレッジ」という考え方があってもいい。元手を少なく、効率的に資産配分ができるのも、レバレッジ活用の利点です。

*1:バンガード・トータル・ストック・マーケットETF
※各銘柄の比率は当ファンドの純資産総額比です。
上記は過去のものであり、将来の運用成果などを約束するものではありません。