WTI、ブレント、ヘンリーハブ、TTFって何?

 ここからは、原油、天然ガス、石炭といった化石燃料の国際的な指標になり得る価格がどこで決定しているかについて書きます。IMF(国際通貨基金)は毎月、各種化石燃料の価格を公表しています。以下の図の通り、原油は三つ、天然ガスは三つ、石炭は二つです。

 World Bank(世界銀行)もほぼ同種の価格を公表していることもあり、これらの価格には「世界の指標」という側面があると言えそうです。原油は「WTI」「ブレント」「ドバイ」、天然ガスは「ヘンリーハブ」「オランダTTF」「日本LNG」、石炭は「リチャーズ・ベイ港など」「ニューキャッスル港など」です。

図:各種主要化石燃料価格の決定拠点

出所:mapchart.netの資料などをもとに筆者作成

原油

「WTI価格」は、米テキサス州西部(West Texas)周辺で産出される、比重の大きさを示すAPI度が中間程度(Intermediate インターミディエート)の原油の価格です。

(API度:America Petroleum Institute米国石油協会が制定。値が高くなるほど軽質。おおむね40度以上が軽質原油、30度以下が重質原油。Intermediateは35度と40度の間くらいで中質と同程度、あるいはやや軽い)

「ブレント価格」は英国、ノルウェー、デンマークの間の北海(North Sea)の複数の海底油田で産出される原油の価格(北海油田の詳細はこちら)、「ドバイ価格」はUAE(アラブ首長国連邦)の首都ドバイ付近の浅瀬にあるファテ油田で産出される原油の価格です(IMFの資料より)。

天然ガス

「ヘンリーハブ価格」は、米ルイジアナ州のメキシコ湾に面した天然ガスの集積地(ハブ(hub)は接続地点)で取引される天然ガスの価格、「オランダTTF(Title Transfer Facility)価格」は、オランダにある欧州最大級のガスを取引するプラットフォームで取引される天然ガスの価格、日本のLNG輸入価格は、同国のLNG(液化天然ガス)の輸入価格です。

 日本のLNGの輸入量は1,010億立方メートルで、これは世界の全輸入量の19.6%にあたります。同輸入量世界No.1の中国は21.2%です。(2021年 BPの統計より)

石炭

 南アフリカ共和国の「リチャーズ・ベイ港など」からの輸出価格、オーストラリアの「ニューキャッスル港など」からの輸出価格が、指標性があると考えられます。石炭の輸出シェアは、1位オーストラリア(28.8%)、2位インドネシア(25.6%)、3位ロシア(17.9%)、4位米国(6.4%)、5位南アフリカ共和国(5.8%)です(2021年 BPの統計より)。