上流・中流・下流って何?

 エネルギー関連の基礎知識を確認する上で欠かせないのが、「上流」「中流」「下流」という考え方です。油田やガス田を探索することからはじまり、ガソリンやLPガスなどの最終製品を供給するまでの一連の流れを、三つに分けたものです。

 目安として、上流は「探索」「生産」、中流は「処理」「貯留」「パイプライン輸送」、下流は「精製」「製品供給」です。以下の図はこうした流れをイメージした図です(米国をイメージ)。

「供給減少」に関するニュースを目にした時、この図にあてはめると、今後の需給や価格動向を考えるヒントが得られます。

 例えば、「油田地帯にハリケーン襲来」というニュースは上流部分、「パイプラインで支障発生」(例:2021年に米国で発生したパイプライン関連企業のシステムがハッキングされた)というニュースは中流部分、「製油所の定期修理」というニュースは下流部分における供給減少要因です。

 上流・中流・下流、どの段階で発生したかで、解消までの時間の長さや難易度が想像でき、それにより原油相場への影響を予測するヒントが得られます。

 また、この考え方は、石油・天然ガス関連の企業の株価動向を考える際の、予備知識にもなります。例えば、以前の「なぜ強い!?バフェットも保有する石油・天然ガス株」で述べたバフェット氏が関心を示す「オクシデンタル・ペトロリアム社」は「上流」部門がメインの石油会社だとされています。

図:石油・天然ガス産業の「上流・中流・下流」(米国をイメージ)

出所:GPA Midstream、JOGMECなどの資料をもとに筆者作成

 また、上記の同レポートで述べたとおり、ロシアのウクライナ侵攻をきっかけに生じた「買わない西側・出さないロシア」の影響で、欧州でのエネルギー需給がひっ迫し、それを補うべく、米国から欧州向けの原油と天然ガスの輸出が増加しています。これは米国国内の「中流」部門にとってメリットと言えます。(この点については、次回の「詳細編」で述べます)