今後の原油相場の展開は?

 現在の原油相場は、以前の「原油市場の「ウクライナバンド」は破壊できるのか?」で書いた、筆者が考える短中期的な下値のめどを下回っています。しかし、冒頭のグラフのとおり、石油関連株はウクライナ危機勃発直前の水準を下回らず、逆に反発しています。

 株式市場とコモディティ(商品)市場という異なる点はあるものの、現在の状況から考えられるのは、「石油は総売りではない」と考えられます。それと符合するように、本レポートでは以下の点を確認しました。

・世界の石油の需給バランス

 今後も「やや」程度の供給超過が続く可能性があるが、現時点では、暴落を誘うような状況は見通されていない。もともと「やや」供給超過でも120ドルを超えたことが複数回あった。需給バランスだけで原油相場の動向を説明することはできない。

・OPECプラス

 上限引き上げは機械的に行われており、そこに大きな意味を見いだすことは難しい。上限を引き上げても、原油生産量はそれに追いついていない。注目すべきは原油生産量。足元のOPECプラスの原油生産量は、ウクライナ危機勃発前に比べてやや増加した程度。

・米国の原油生産量

 世界No.1の産油国が、自国の原油生産量を急増させず、原油相場を下げる策を外部に求めている。現政権の政策上の都合で大増産ができない。

 以上、3点を見ていると、今後、原油相場が継続的に下落するとは考えにくい、と筆者は感じます。また、これら3点のうち2点(OPECプラスと米国の原油生産量)は、政策起因であるため、すぐに方向性が変わることは考えにくいでしょう。

 前回の「年末までのコモディティ(商品)市場の風景」で、原油相場が年末にかけて反発するためには、四つの条件が必要だと書きました。8月に入り、諸情勢が変化したことを受け、一つ追加します。

・米国で最悪にいたらない利上げが続くこと。(今年のFOMC(米連邦公開市場委員会)は9・11・12月の3回)

・欧米の中央銀行がインフレ退治に利上げが有効だとみなし続けること。

・ウクライナ危機が鎮静化しないこと(底流するインフレ要因)。

・米中間選挙に向け、美点凝視の選挙戦が続くこと。

・「ペロシ・ショック」が尾を引かないこと。

 今回追加した「「ペロシ・ショック」が尾を引かないこと」は、東アジア情勢や米中関係がさらに悪化して世界景気が後退する懸念が生じないこと、という意味です。上記5点を満たし続ければ、原油相場は徐々に反発する可能性があると、考えます。

[参考]原油関連の具体的な投資商品例

国内株式

INPEX
出光興産

国内ETF・ETN

NNドバイ原油先物ブル
NF原油インデックス連動型上場
WTI原油価格連動型上場投信
NNドバイ原油先物ベア

外国株式

エクソンモービル
シェブロン
オキシデンタル・ペトロリアム

海外ETF

iシェアーズ グローバル・エネルギー ETF
エネルギー・セレクト・セクター SPDR ファンド

投資信託

UBS原油先物ファンド
米国エネルギー・ハイインカム・ファンド
シェール関連株オープン

海外先物

WTI原油(ミニあり)

CFD

WTI原油