「ロシア・ショック」への警戒

 現在の円安進行とウクライナ情勢を巡るロシアへの経済制裁は、1998年8月、円キャリートレード真っただ中、ロシアのデフォルト(債務不履行)に端を発したヘッジファンドのLTCM破綻を想起させます。この出来事によってドル/円は147円台から翌年には101円台まで円高となりました。

 現在と当時とは、円売りポジションの大きさや相場を取り巻く環境も異なるため、インパクトの違いはあるものの、ロシアのデフォルトに端を発する「ロシア・ショック」については留意しておく必要があります。ロシアに対する経済制裁の効果はこれから目立った動きとなって表れてきそうです。

 ロシアは、3月16日に支払期限を迎えるロシアのドル建て国債(1億1,700万ドル、約140億円)のデフォルトを強行するとの見方が強まっています。経済制裁によってロシア中銀の資産が凍結され、外貨準備の半分程度(約3,000億ドル)が引き出せないことに抗議し、ロシア財務相は米欧がロシア中銀の外貨準備凍結を解除するまでルーブルで支払うと主張しています。

 ロシア財務相は、14日、外貨建て債務の返済について、経済制裁の影響で返済ができない場合は、ルーブルでの返済になる一時的な措置を承認しました。しかし、発行時にドルで支払うことが条件になっているため、ルーブルによる返済は事実上のデフォルトとみなされる可能性があります。

 16日を乗り切れても31日には4億4,700万ドル(約530億円)のドル建て払い、4月4日には21億2,900万ドル(約2,500億円)のドル建て払いの期限が控えています。3月16日にいきなりデフォルトとはなりません。猶予期間が30日あり、4月15日までに支払わなければデフォルトとなります。

 デフォルトになったとしても国際金融システムへの影響は限定的だとの見方が多いようですが、こういう経済環境の中ではリスクがどこに散らばっているかわからない部分もあるため、「ミニ・ロシアショック」に対する警戒シナリオにも留意しておく必要がありそうです。