欧州主導のESG基準は日本企業の省エネ環境技術を低く評価

 欧州の年金基金は、投資先企業を選別する際にESGスコアを重視します。ESGスコアとは、非財務情報の中核と考えられているEnvironment(環境)・Social Responsibility(社会的責任)・Governance(ガバナンス)の3項目を数値化したものです。

 中でも、近年重要度が高まっているのが、E(環境経営)です。世界各国が脱炭素の目標を打ち出す中、脱炭素に貢献する企業を高く、貢献しない企業を低く評価します。

 欧州主導のESG基準は一見、脱炭素を進めるのに合理的な基準に思えますが、実態は異なります。欧州主導のESG基準には、問題点が1つあります。化石燃料を使うビジネスは、たとえ世界一効率的に化石燃料を使っていてもすべて「悪」とみなすことです。日本企業の省エネ環境技術は、欧州主導のESG基準で低く評価されます。

 一方、化石燃料の代わりに電気を動力として使うことが、「善」とみなされてきました。すべての電気を自然エネルギーから発電しているならば理解できますが、現在、人類が使う電気のほとんどを化石燃料から作っています。そういう中で、電気で動かせばなんでも「善」とみなすのには、問題があります。

 たとえば、自動車の評価がそうです。世界一燃費の良いトヨタのハイブリッド車の販売にペナルティが科され、富裕層しか購入できないテスラの高級EV(電気自動車)の販売に報奨金が出されるのは、異様です。

 テスラを動かす電気が化石燃料から作られ、テスラの車体には化石燃料を使って生産される鉄や化学製品が使われています。そういう事実を無視して、トヨタのハイブリッド車を「悪」、テスラのEVを「善」とするのは、かたよった基準だと言わざるを得ません。

 一昨年まで、原油・ガスは構造的に供給過剰で、エネルギー価格は下げ続けるのが当たり前でした。そうした環境下で、世界各国は一斉に「脱炭素」の目標を決め、一斉に原油・ガスの使用削減と、自然エネルギーへのシフトを進めました。動力として、化石燃料を使わず、なんでも電気で動かすことが理想的とされました。

 そうした環境下、日本企業が保有する省エネ・環境技術は、価値が低いと見なされました。ただし、原油が急騰した今、ゲームチェンジが起こると思います。日本の省エネ環境技術の価値が見直され、日本企業の競争力にプラスの影響を及ぼすと考えています。

日本株、押し目買い方針継続

 ウクライナ危機をきっかけに原油高騰が起こり、それが世界経済に脅威となっています。原油価格が大きく反落しない限り、株が世界的に反発局面に入るのは難しいかもしれません。ただし、長い目で見て、日本株は良い買い場を迎えていると考えています。

 原油高が日本企業の競争力を高める可能性も考慮し、原油高で売られる割安な日本株をこつこつと買い増ししていくことが、中長期の資産形成に寄与すると考えています。

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