中国経済は「ウクライナ・ショック」に耐えられるか?

 最後に、冒頭で描写した、収束の兆候がみられないウクライナ危機が中国経済へ及ぼす影響について考えてみたいと思います。

 中国にとって、最大の懸念事項は、西側諸国から「中国はロシアの軍事侵攻を支持している」と認定され、ベラルーシのように経済制裁を受ける事態です。習主席はそんな事態を避けるべく、危機に深入りはせず、一方外交的あっせんを展開することで、バランスを取っていくものと思われます。ここでは、中国が経済制裁を受けた場合の影響については深追いしないこととします。

 全人代では、マクロ経済、産業、エネルギーといった分野の政策を統括する国家発展改革委員会が記者会見を開き、ウクライナ危機の中国経済への影響について述べました。以下、連維良(リエン・ウェイリャン)副主任の発言を引用します。

「目下ロシア・ウクライナの衝突はエスカレートしており、世界エネルギー市場にショックを与えている。原油、天然ガスの国際価格はさらに高騰している。中国は原油、天然ガスの輸入比率が比較的高く、必然的に影響を受ける。輸入コストは客観的に見て上昇している。ただ、全体的にはコントロール可能な範囲である。なぜなら、中国はエネルギー消費大国であるが、生産大国でもある。エネルギー供給は全体的に保障されている。また、原油、天然ガスの輸入国も多元化しており、長期契約の比率も高い。各方面が契約を履行しさえすれば、輸入は全体的に安定を維持できる」

 この発言からもみて取れるように、ウクライナ危機の中国経済への影響は軽視できません。エネルギー価格の高騰は企業収益を圧迫し、エネルギー供給が乱れ、滞れば、正常な経済活動や国民生活にも支障をきたします。そんなリスクを回避すべく、同委員会は、エネルギーの生産能力、生産量、貯蓄、供給を増やし、(1)輸入、(2)価格、(3)期待を安定させるという目標を明言しました。ウクライナ危機を経て、エネルギー供給の安定的生産と供給にこれまで以上の「自助努力」をしていくという宣言だと解釈できるでしょう。

 全人代の審議を眺める限り、中国当局は、ウクライナ・ショックの中国経済への影響は、軽視できないけれどもコントロール可能だと分析。リスクはエネルギー価格や国内経済情勢よりも政治や外交面にあり、上記のように、危機への対処を誤り、西側諸国から集団的制裁に遭うことで、中国経済が被る損害と打撃が顕著に浮き彫りになると踏んでいるようです。