実質的に為替変動の影響のみの場合は?

 次のようなケースはどうでしょうか?

 1ドル=100円の時に株価1ドルの株を1万株購入。1年後、株価は変わらず1ドルで売却したものの、その時の為替レートは1ドル=90円になっていたとします。

 この場合、(1ドル×1万株×90円)-(1ドル×1万株×100円)=90万円-100万円=マイナス10万円(10万円の損失)となります。

 株価は1ドルのまま変わらなかったわけですから、この損失は全て為替レートの変動によりもたらされたものですが、米国株を保有している期間に生じているので、全て売却損(譲渡損)となります。

 したがって、預金から生じた為替差損と異なり、上場株式などの売却損として翌年以降3年間繰り越すことができるのです。

こんなケースはどうなるの?

ご質問1

 米国株を売却した後ドルのまま保有しています。円転しなければ為替についての申告はいらないのですか?

回答1

 まず、米国株を売却した際、上記のとおり米国株を保有していた期間にかかる為替差損益は売却損益に含まれます。売却後、円転せずドルのまま保有しているのであれば、その間の為替差損益は実現していないので、確定申告は不要です。

ご質問2

 円を為替取引で米ドルに転換して、米国株を買い付けました。為替取引の分について確定申告は必要なのですか?

回答2

 円を米ドルに換え、直ちに米国株を買い付けた場合、為替変動はないので為替差損益も生じず、確定申告は不要です。

 ただ、円を米ドル預金などに換え、しばらく保有していた後、その米ドルで米国株を買い付けた場合は、円を米ドルに換えた後、米国株を買い付けるまでの期間に生じた為替レートの変動による為替差損益が実現したことになります。したがって、為替差益が生じているときは原則として確定申告が必要となります。