ポイント2:配当金の有無で株価が大きく異なることに注意

 2022年3月期通期の業績予想の発表とともに、配当金の予定金額も発表されています。それによると、各社それぞれ1株当たりの配当金は次のようになっています。

表2:大手海運3社の1株当たりの配当金

銘柄  1株当たりの配当金
日本郵船 700円
商船三井 550円
川崎汽船 未定

 前出の表1のとおり、3社とも1株当たり当期純利益の予想値は2,800~3,000円程度であり、ほとんど変わりません。

 しかし決算発表後の株価(2021年8月6日時点での最高値)は、日本郵船が8,150円、商船三井が7,070円、川崎汽船が4,430円と、川崎汽船の株価が他の2社に大きく水を開けられる形となっています。となると考えられるのは、配当金の金額が、株価形成に影響を与えているという点です。

 さすがに、日本郵船や商船三井がここまで配当金を増額してくるとは予想していませんでしたが、川崎汽船の配当金は他の2社より低いであろうということは、実は事前に推測することができたのです。

 それが先日のコラムで取り上げた「個別決算での欠損金の存在」です。

『会社四季報』に掲載されている各社の利益剰余金は、あくまで連結ベースです。川崎汽船も連結ベースでは利益剰余金が1,300億円あります。しかし、川崎汽船の2021年3月期の有価証券報告書を見ると、個別決算にて欠損金が350億円あり、これが解消しなければ配当金を出すことはできないのです。

 また、最新号の『会社四季報』を見ると、日本郵船は200円、商船三井は150円の配当予想である一方、川崎汽船は0~50円となっていて、川崎汽船の配当予想は他の2社より少なく、無配の可能性もあることが読み取れます。

 決算発表以前から、川崎汽船の株価が3社の中で最も低かったのは、配当金が低いであろうことを織り込んでいたといえるのです。

 業績が好調で1株当たり当期純利益が同水準でも、配当金いかんで株価が大きく異なってくる可能性があるという事実は、ぜひ知っておくべきでしょう。

 ただし、配当利回りで考えて株価がどこまで上昇するかを推測するのは、PERと同様に困難です。今期予想と同水準の配当金が今後も維持されるのは難しいからです。

 したがって、例えば「配当利回りが8%だから、まだまだ買える水準だ」と考えるのは早計です。