インフレは悪か?

 これまで、世界的なデフレ(またはインフレ率の低下)が諸悪の根源のように言われてきましたが、いざインフレ率が高まってくると、いきなり「インフレ懸念が問題」と話しが変わるのは、これまで過去に何度も繰り返してきたことですが、少し違和感を覚えるところです。

 インフレには2種類あります。良いインフレと悪いインフレです。日米欧の政府や中央銀行が、「デフレを止め、インフレにしなければならない」と言っている時は、「良いインフレ」を意識しています。

 景気が回復し、経済が活性化し、需要の拡大にともなって物価が上昇するのが、「良いインフレ」です。ディマンド・プル・インフレ(需要けん引型インフレ)とも言います。

 一方で、「悪いインフレ」もあります。生産財や天然資源の不足によって物価が上昇するインフレで、コスト・プッシュ・インフレ(コスト押し上げ型インフレ)とも言われます。

 需要の伸びをはるかに上回る物価上昇が起こると、物価上昇によって消費が抑制され、インフレによる景気後退を引き起こす可能性があります。景気過熱期やスタグフレーション(物価上昇と不況が同時に起こること)の時に見られます。

 これまで、インフレにすることが必要と言っていた中央銀行が、いきなり、インフレ懸念を語るようになったのは、米景気にやや過熱色が出ていて、米インフレに少し「悪いインフレ」になる兆しが出ているから、と考えられます。