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著者の窪田真之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「 [動画で解説]FRBタカ派転換?米利上げ懸念で株安 バリュー株「押し目買い」方針継続」
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今週の日経平均は調整続く可能性も
先週(6月14~18日)の日経平均株価は1週間でみると、ほぼ横ばいでした。1週間で15円上昇の2万8,964円で、2万9,000円前後での膠着が続いています。
日経平均は先週前半、景気回復期待から一時2万9,480円まで上昇しました。ところが、6月16日(水)にFRB(米連邦準備制度理事会)が「2023年に利上げが2回ある」という予想を出したことから、2022年にもテーパリング(量的金融緩和の縮小)が始まる不安が広がり、NYダウが売られ日経平均も下がりました。
6月18日(金)に、2022年後半の利上げ可能性を示唆するセントルイス連銀ブラード総裁の発言が伝わると、NYダウは533ドル安と下げ幅を広げました。その結果、先週のNYダウは1週間で1,189ドル安の3万3,290ドルとなりました。
NYダウと日経平均の日次推移:2020年10月1日~2021年6月18日
米国で来年にもテーパリングが始まる不安が高まったことから、NYダウ、日経平均とも今週は調整が続く可能性があります。
日経平均は、以下のチャートでわかる通り、「三角もちあい」を形成しつつありますが、いったん下放れを試す可能性があります。下がったところは、バリュー株「買い場」と判断しています。米利上げに対する警戒は行き過ぎで、当分、緩和的状況が続くことから、ショックが一巡すれば日経平均は買い戻されると予想しています。
日経平均日足:2020年11月1日~2021年6月18日
2022年テーパリング、2023年利上げを織り込む金融市場
米景気が好調を通り過ぎて、一気に過熱する不安が出ています。ワクチン接種率が高まり、リベンジ消費が盛り上がる中で、1.9兆ドルの財政出動も出てくることから、以下の通り、米国の非製造業の景況観は、コロナ前を超えています。
米ISM製造業・非製造業景況指数:2018年1月~2021年5月
金融市場の不安を高めているのは、足元米国でインフレ率が急速に高まっていることです。
米国消費者物価指数上昇率(前年比):総合指数と、食品・エネルギーを除くコア指数
先週、米国の金融政策を決めるFOMC(連邦準備制度理事会)で、FRBは2023年に2回の利上げがあるという予想を発表しました。3月のFOMCでは、2023年まで利上げはなしの予想を出していたので、急な方針変更です。
パウエルFRB議長は、FOMC後の記者会見で、テーパリング(金融緩和の縮小)の議論を始めることを認めました。FRBの資金供給「大判ぶるまい」が終了する懸念から、NYダウは下落しました。
2022年後半から2023年にかけて、利上げが見込まれるようになったことを受けて、米国の2年・5年金利は上昇。一方、金融引き締めが実際に行われれば、米景気にブレーキがかかることを反映し、10年金利は上昇しませんでした。
米長期金利10年・5年・2年・1年の動き:2021年1月4日~6月18日
インフレは悪か?
これまで、世界的なデフレ(またはインフレ率の低下)が諸悪の根源のように言われてきましたが、いざインフレ率が高まってくると、いきなり「インフレ懸念が問題」と話しが変わるのは、これまで過去に何度も繰り返してきたことですが、少し違和感を覚えるところです。
インフレには2種類あります。良いインフレと悪いインフレです。日米欧の政府や中央銀行が、「デフレを止め、インフレにしなければならない」と言っている時は、「良いインフレ」を意識しています。
景気が回復し、経済が活性化し、需要の拡大にともなって物価が上昇するのが、「良いインフレ」です。ディマンド・プル・インフレ(需要けん引型インフレ)とも言います。
一方で、「悪いインフレ」もあります。生産財や天然資源の不足によって物価が上昇するインフレで、コスト・プッシュ・インフレ(コスト押し上げ型インフレ)とも言われます。
需要の伸びをはるかに上回る物価上昇が起こると、物価上昇によって消費が抑制され、インフレによる景気後退を引き起こす可能性があります。景気過熱期やスタグフレーション(物価上昇と不況が同時に起こること)の時に見られます。
これまで、インフレにすることが必要と言っていた中央銀行が、いきなり、インフレ懸念を語るようになったのは、米景気にやや過熱色が出ていて、米インフレに少し「悪いインフレ」になる兆しが出ているから、と考えられます。
バリュー株押し目買い方針
私は、現時点で、米景気過熱・悪いインフレ加速を議論するのは時期尚早と考えています。したがって、今週、バリュー株が売られる局面は、押し目買いの好機になると判断しています。
三菱UFJ FG(8306)、東京海上HD(8766)、オリックス(8591)、三菱商事(8058)など配当利回りの高い景気敏感株が買い場と判断しています。
ただし、インフレ・利上げ懸念が出て、先行き世界景気の減速が意識されるようになってきたことを勘案するならば、ディフェンシブな(景気変動の影響が相対的に小さい)高配当利回り株に分散投資していくことを考えても良いと思います。
NTT(9432)、武田薬品工業(4502)、JT(2914)などがその候補と考えています。
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