イエレン財務長官に待ち受ける茨の道?

 イエレン財務長官は5月3日に収録されたアトランティック誌とのインタビューで、「米経済が過熱しないよう確実を期するには、金利はやや上昇せざるを得ないかもしれない。金利の極めて小幅な上昇につながる可能性がある」と述べ、そのインタビューが翌4日に公開されると、市場に動揺が広がった。

 このイエレン財務長官発言で、現在の金融緩和が早期に引き締めに転じるのではないかとの観測が高まり、株式市場ではIT関連銘柄が売られ、ナスダックの株価指数は前日比3%近い大幅な値下がりを記録した。イエレン財務長官の発言はホワイトハウスでも問題となり、イエレン財務長官は自ら「それはわたしが予測したり推奨したりしていることではない」と、異例のスピードで火消しにまわった。

 FRB(米連邦準備制度理事会)議長としては市場の洗礼を受けることなくその任期を全うしたイエレン氏であるが、財務長官としては茨の道が待ち受けている可能性が高い。なぜなら、政府の大盤振る舞いだけではない。コロナウイルスのパンデミックを理由に主要各国の中央銀行は、政策金利を引き下げ、金利をこれ以上引き下げることができない場合は、債券購入を増やした。これらの結果、主要中央銀行のバランスシートは29兆ドルに膨れ上がっている。

主要中央銀行の資産額の推移

出所:ヤルデニリサーチ

グローバルにおけるマネタリーの増加

出所:ヤルデニリサーチ

 世界的な金融緩和によって、グローバル規模でのマネーサプライの急増が引き起こされている。その水準はかつて見たことのないほどである。現在のマーケットを支えているのは、ひとえにこの過剰流動性である。ここから出口に向かうことは、相場が逆回転を始めること意味している。米国においてもし金利を引き上げざるを得ない状況に追い込まれた場合、市場に溢れかえったこの流動性が濁流となって市場から噴き出していくだろう。