「日経均衡為替レート」は1ドル=94円

 日本経済新聞によると、経済の実体から算出する理論値「日経均衡為替レート」は2020年10~12月期で1ドル=94円と報じられています。均衡為替レートはその国の政府債務や経常赤字の状況から算出されているとのことです。

 米国はコロナ感染拡大によって冷え込んだ経済を回復させるために巨額の財政出動に動いたため「双子の赤字」が膨れ上がり、その結果1年前の均衡レートである110円から16円のドル安が進んだ計算となっています。現在の水準である108円と比べても14円程円高の水準です。

 しかし、「双子の赤字」という懸念を上回る経済回復が米国で進行中のため、現時点ではその懸念を解消するために今すぐ為替レートの調整が起こることは現実的ではありませんが、留意しておく必要はあります。

 3月後半から4月にかけて、米10年債利回りは1.5%~1.75%の間で動きましたが、これに呼応するようにドル/円は、108円~111円の間で動きました。この動きを参考にすると、米10年債利回りが1.5%~1.75%で動いている限り、ドル/円も108円~111円のレンジで動きそうな気配です。

 今後、米国内のワクチンの摂取が進むにつれて経済回復期待が更に高まるだけでなく、実際に引き続き強い経済指標が出てくれば、金利は再び上昇してくることが予想されます。また、2兆ドルのインフラ投資も、今後、議会でもまれて実現が近づくにつれて、経済回復加速への期待によって金利上昇要因となることが予想されます。

 その場合、1.75%を超え、2%を目指す動きが出てくれば、ドル/円も一段の円安の動きになるかもしれません。しかし、逆に、強い経済指標が続いても、まだ、仕事に戻れていない800万人超の雇用の回復が鈍い場合は、全体の賃金も上がらず、物価上昇も一時的な動きとなり長期金利は期待ほど上昇しないことも予想されます。

 また、2兆ドルのインフラ投資も増税など財源が確保できなければ債務は一段と膨らみ、上記の「均衡レート」は更に円高に修正されることが予想されます。その場合、悪い金利上昇が起これば、為替レートの調整が起こるかもしれません。

 経済回復による長期金利上昇という第1段階は3月に織り込まれたかもしれませんが、次のステージで同じようなことが起こるかどうか注意を払う必要がありそうです。「均衡為替レート」は、そのことを教えてくれています。