7:日中関係は不安要素が残るも、安定的に推移する

 中国の対外的攻勢といえば、尖閣諸島問題を抱える日本も例外ではありません。中国公船の尖閣付近での挑発的行動が前代未聞に活発化しており、日本政府は主権侵害、領海侵犯といった観点から抗議していますが、先般の王毅国務委員兼外相の訪日時における姿勢や反応にも垣間見られるように、中国側が聞く耳を持ち、自制に努める様子は見られません。

 尖閣、香港、南シナ海といった問題で日中両国の溝は深く、近未来でそれが埋まる兆候は見出せません。2021年の間に、習近平国家主席の訪日が実現するかどうかも不明瞭です。

 とはいえ、両国政府はコロナ禍における経済、ビジネス、人的往来を再開すべく協議を続けており、外交関係を安定的に管理し、民間交流を促進させるという点では一致しています。日中関係が危機的な状況に陥るリスクは低いと言えるでしょう。新型コロナが終息し、両国間の往来が正常な状態に戻れば、日本に中国からの観光客が戻り(2019年は延べ959万人)、年間延べ1,000万に到達するのも時間の問題だと私は見ています。そうなれば、インバウンドビジネスを後押しするのは必至。日中関係の安定的推移は日本経済、マーケットにとっても軽視できない要素なのです。

8:デジタル人民元は初期段階、当局は本気だが急いでいない

 中国政府は、デジタル人民元の推進を、「米ドルの覇権的地位」切り崩し、人民元の国際化といった観点から戦略的に重視しています。アフリカや中東、南米、東南アジアといった地域における自国企業との決済で同通貨の使用が広まれば、中国の対外影響力の向上につながるとも認識しています。

 デジタル人民元を発行する中国人民銀行の幹部によれば、同行は、インターネット上ですでに偽のデジタル人民元を発見するなど、同通貨発行、流通のための整備を進めているようです。10月には、同通貨を本格的に流通させる試験区として設定した広東省深セン市で、1,000万人民元を実験的に発行しました。デジタル人民元の動向を追いかける上で、中央銀行以外に、深セン市にも注目です。

 ただ、中国政府は同通貨の推進に対しては「初期段階」(同幹部)という認識を持っていて、第14次五カ年計画の期間(2021~2025年)を通じて、実験結果を検証しながら、徐々に進めていくつもりのようです。中国が同通貨の発行に前のめりになりすぎていないのは、米国との間で生じ得る摩擦の管理という意味でも前向きな傾向です。と同時に、人民元の国際化、資本取引の自由化、金融体制改革、外資への市場開放、システミックリスクの回避といった、マーケットの関心が高い分野を占う上で、デジタル人民元をめぐる動向は注目する価値ありだと思います。