IMFが相場急落リスクに警鐘を鳴らす

 6月25日、IMF(国際通貨基金)は、「国際金融安定性報告書(GFSR)」を公表しました。

 IMFはこの報告書で、1月中旬の高値水準と比較し、85%近くまで回復した日米などの株価上昇に対して「実体経済と乖離(かいり)しており、割高感がある」と警戒感を示しました。主要中央銀行が6兆ドル(約640兆円)規模の資産購入に踏み切り、前例のない金融緩和が投資家のリスク選好を加速させ、株価などの急回復につながったと分析しています。そして、投資家が過大にリスクをとっている可能性を指摘し、株式や社債の価値が過大に評価されていることによって、これら金融資産急落のリスクに対し警鐘を鳴らしています。

 IMFは相場下落のきっかけとして、次の3点を主な要因として挙げています。

(1)景気後退の長期化
(2)新型コロナウイルス感染第2波
(3)中央銀行への過度な期待の消失

 (3)については、中央銀行に対する期待がすぐに裏切られるとは思えず、今すぐ起こるという話ではなさそうです。なぜならFRB(米連邦準備制度理事会)は2022年末までゼロ金利を維持するという金利見通しを示しており、パウエルFRB議長も記者会見や議会証言で「Wall StreetもMain Streetも何が何でも支える」という強い意志を示しているからです。

 ただ、パウエルFRB議長は「新型コロナウイルス感染第2波が起きれば米経済の試練となる」とも述べており、「景気回復は一段と弱まり、経済再生の道のりも極めて長くなる」と長期停滞に陥る懸念も表明しています。このような事態になったとき、市場で期待されているほど金融緩和が長期に続かなかった場合、市場は一気に失望。投資家がリスクテイクを見直すというシナリオが想定されますが、いずれにしろ、まだ先の話と思われます。

 しかし、(1)と(2)の要因は、双方が絡み合って断片的に起こっているため注意が必要です。

 例えば、先週6月26日(金)にNYダウ平均株価が730ドル近く急落したきっかけは、フロリダ州で感染者数増加が加速したことや、テキサス州知事が州内のバーの営業停止やレストランの入店制限を命じたことが報じられたこと。米国内の感染拡大と経済活動の再開制限が嫌気され、感染者数の急増によって「景気が悪影響を受ける」という見方が広まったようです。

 ここのところ、経済指標も予想より良い数字が発表されていることから、景気回復期待が強まっており、相場が急落しても株はすぐに反発しています。

 しかし、市場も感染者の増加が景気の足を引っ張るという構図に敏感になってきていることにも留意しておく必要があります。

 現在、米国で感染者が急増しているのは新型コロナウイルス第2波ではありません。第1波の渦中で、経済活動再開によって感染急増が起こっている状況です。このように第2波(2)が起こらなくても、感染者数増加による景気後退懸念(1)に市場は敏感になってきています。

 また、予想よりよい経済指標が発表されても、前年と比べるとその水準はまだまだ低い状況です。そのため感染者数増加によって経済活動が再び制限されることが繰り返されると、投資家は「予想以上に景気後退が厳しくかつ長期化する」という見方を強めていくことが予想されます。