自粛の影響は広範に及ぶ

 イベントだけではなく、宴会や企業研修、果ては、習い事まで自粛モード。学校が休校になったことで、自粛を通り越して開催が事実上不可能という事態に発展しているケースもあります。

 プロフェッショナル&パラレルキャリアフリーランス協会「【署名募集】新型コロナウイルス感染拡大防止措置によるフリーランス・自営業者への影響に関する声明と緊急要請」には悲痛な声が掲載されています。一部を引用しましょう。

 音楽教育の現場では、学校が休校になれば連鎖的にお休みにせざるを得ないのが現状。いつ元に戻るかわからずです。又、演奏の仕事では集客自体がNGとなれば全ての仕事がなくなります。(ピアニスト、ピアノ講師)

 学校休校に伴い習字教室も臨時休講せざる得なく、収入がなくなる。それでもテナント家賃や光熱費がかかる為、赤字。(習字教室の先生)

 こうした局面で特に重要なのは、企業においても個人事業主においても、まずは資金繰り。黒字の資金繰り倒産もあれば、逆に、短期的な赤字であっても資金繰りが続けば倒産は免れます。

 コロナショックの政府対策では資金繰り支援が打ち出されていますし、公的金融機関の制度融資や自治体によっては小規模事業者支援制度や中小企業向け助成金・補助金制度を設けている先もあります。

 この局面での意思決定が難しいのは、自粛要請がいつ・どのような状況になれば撤回されるか、見通しが立たないこと。このため、廃業を決めた旅館がニュースになるなど新型コロナの感染ニュースだけではなく、経済への影響を取り上げる事例が増えてきています。

 新型コロナで生産設備が棄損する訳ではないですが、倒産・廃業が生じると、その会社や働いてきた方のスキルやノウハウの蓄積が霧散してしまいます。経済にネガティブなショックがあると、その原因が取り除かれた後も、生産性には下押し圧力がかかることになります。

 金融面の懸念事項としては、この先の設備投資の抑制も考えられます。異次元緩和のマイナス金利、イールドカーブコントロールの影響で金融機関の収益は細っていて、そこに株価下落など有価証券評価損が加わると、自己資本比率が悪化しかねません。

 事業者側も目下、収益が悪化していますが、収益悪化が債務者区分の悪化(返済能力の問題)にまで繋がるにはタイムラグがあります。この3月決算を越えても、次の中間期決算に向けて債務者区分が悪化する先が増えるでしょうから、不良債権の増加が先々の設備投資の抑制に繋がる可能性もあります。

 自粛が要請されているタイミングでは、通常の経済活動が阻害されていて、人も物の移動も制限されます。その意味では、減税などで薄く広くばら撒くよりも資金繰り支援の方が効率的。規模や貸出条件に物足りなさはありますが、自粛要請期間の再々延長があれば、条件が緩和されるかもしれません。