新たに浮上したリスク~中国景気減速の影響

 そしてインタビューでは、10大リスク以外に新たに浮上したリスクとして、中国景気減速の影響を指摘しています。イアン・ブレマー氏は、「中国の景気減速の影響が強くなっている。米中の関係が悪化すると台湾や香港で起こっているようなリスクも噴出する。景気がよい時はそれらのリスクは問題ではないが、景気が減速していることこそが問題だ」と、中国の景気減速が新たなリスクを生み出すことに警戒しています。ブレマー氏は、台湾や香港で起こっていることを中国景気と関連付けています。

 今週15日に発表された中国4-6月期GDP(国内総生産)は前年比+6.2%と前期(+6.4%)より低下しました。しかし、為替市場では、予想通りであったことや、同時に発表された中国6月小売売上高(前年比+9.8%)と鉱工業生産(同+6.3%)が予想を上回ったことから、ドル/円は108円割れから108円台に若干上昇しました。しかし、今月末のFOMC(連邦公開市場委員会)を控えているため上値の重たい状況は続いています。

 中国のGDP+6.2%は予想通りでしたが、手放しで喜べる数字ではありません。+6.2%はリーマンショック直後の2009年1-3月期の+6.4%を下回っており、四半期として統計をさかのぼれる1992年以降で、最低の水準となっています。また、中国政府は2020年までに10年比でGDPを倍増させる長期目標を掲げていますが、達成するためには2019~2020年に平均6.2%の成長が必要と説明しています。今回のGDPはほぼ下限の水準にあり、長引く貿易戦争の影響で輸出と投資が低迷している厳しい数字となっています。

 中国の四半期GDPは下表の通り2018年第1四半期から低下傾向にあります。貿易戦争の出口が見えない現況では、2019年後半も下押し圧力が続く可能性があります。ブレマー氏が予測する関税引き下げが前倒しにならない限り、厳しい状況が続くことが予想されます。そしてブレマー氏が指摘するように中国景気の減速の影響が強くなってきていることから、さらなる景気減速は台湾、香港だけでなく、中国本土の内政問題や世界経済の波乱要因にもなる可能性があります。1つのシナリオとして留意しておく必要がありそうです。

中国四半期GDP推移(Q=3ヵ月)

2018/1Q 2018/2Q 2018/3Q 2018/4Q 2019/1Q 2019/2Q
6.8 6.7 6.5 6.4 6.4 6.2