トランプ大統領はイベント通過後に、しばしば「豹変」。今回は?

 選挙結果以上に注目されるのは、選挙後のトランプ大統領の発言です。一般的には、共和党が予想以上に勝てば、貿易戦争をさらにエスカレートさせ、共和党が負ければ、対外的な強硬策を続けにくくなると、考えられています。ただし、私は、トランプ大統領がこのイメージを裏切る可能性も想定しておいた方が良いと考えています。

 たとえば、共和党が予想以上に勝ったにもかかわらず、対外的に突然、融和姿勢を打ち出すといったことがあるかもしれません。過去のやり口からは、そうした豹変(ひょうへん)がたびたび観察されています。

 簡単に過去の「豹変」を振り返ります。

2016年11月:トランプ大統領による、大統領選の勝利宣言

大統領選挙期間中に、トランプ氏は「イスラム教徒の米国への入国禁止」、「メキシコとの国境に壁を建設」、「中国からの輸入品に45%の関税をかける」といった過激発言を繰り返していました。そのため株式市場では、トランプ氏が当選すると株が暴落するというコンセンサスができあがっていました。
 ところが、トランプ氏の勝利宣言は美しい言葉で飾られており、株式市場にフレンドリーな内容でした。

 <2016年11月のトランプ氏「勝利宣言」抜粋>

・すべての共和党、民主党の党員に対して、米国の国民として団結することを訴えたい。

・すべての国と共通のグラウンドを持ち、良好な関係を築いていきたい。

・高速道路、橋、トンネル、空港、学校、病院といった社会インフラを再建する。インフラ再建で何百万人の雇用を生み出したい。

 トランプ氏の豹変を受けて、2016年11~12月には、「トランプ・ラリー」と呼ばれる株高・ドル高が進みました。

トランプ大統領の経済政策

 大統領選期間の発言では、トランプ大統領は低所得者層の味方で、大企業や富裕層に厳しいイメージでした。ところが、実際にやったことはその逆でした。大規模減税では、大企業・富裕層に大いなるメリットを与えました。その財源として、低所得者向けの給付カットを行いました。
 これまでの共和党大統領と異なる異端児と見られていましたが、実際はきわめて資本主義色の強い、伝統的な共和党の政策を実行してきたと言えます。米国株式市場は、トランプ大統領の「豹変」を好感して、大きく上昇しました。

EUとの通商交渉

 徹底的に戦う姿勢を見せながら、ある程度、EU(欧州連合)側の譲歩を得られるメドがたつと、一転して友好的な姿勢に転じました。

日本との通商交渉

 徹底的に戦う姿勢を見せておいて、突如友好的になり、また厳しい姿勢を見せるなど、ころころと態度を変えています。

北朝鮮との外交交渉

 明日にも米国から先制攻撃を仕掛けるような姿勢を見せておいて、突如、米朝首脳会談に応じる豹変ぶりを見せました。

 このように、トランプ大統領は、いい意味でも悪い意味でも、「豹変」を繰り返してきました。中間選挙の結果が出たあと、また豹変することはないのでしょうか?

 ベストシナリオは以下の通りです。共和党が予想以上の勝利を収めた後、トランプ大統領が豹変して、「中国との交渉で融和姿勢を見せる」ことです。トランプ大統領の強いリーダーシップの元で、米中関係が改善に向かう期待が出れば、世界的な株高につながるでしょう。

 ただし、ワーストシナリオも考えることはできます。共和党が敗北し、指導力を失ったトランプ大統領が「対外強硬策をさらに強める」シナリオです。可能性は低いと思いますが、想定はしておきます。

 以上、結論のない話で恐縮ですが、さまざまな可能性に対し、柔軟に対応できるように、心の準備をしておく必要があると思います。

 

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