表4 自動車部品メーカーの世界ランキング(2015年度)

銘柄コメント:小野薬品工業

1.ブリストル・マイヤーズ スクイブがCheckMate-026試験の結果を公表

10月9日、ブリストル・マイヤーズ スクイブ(BMS)とメルクから、オプジーボとキイトルーダについて重要な発表がありました。

まずオプジーボについて、BMSは8月5日速報したCheckMate-026試験(非小細胞肺がんのステージⅣ患者に対するファーストラインの試験で、オプジーボ単剤と既存の化学療法剤との比較試験、PD-L1発現率5%以上の患者に対するもの)の詳細を公表しました。

それによると、026試験におけるPD-L1発現率5%以上の患者の無増悪生存期間(PFS、治療後、がんが進行せず安定した状態である期間のこと)の中央値はオプジーボ群で4.2カ月、プラチナ製剤を含む2剤併用化学療法群では5.9カ月でした。026試験の主要評価項目はPFSなので、これは悪い結果と言えます。

また、全生存期間はオプジーボ群14.4カ月に対して、化学療法群13.2カ月と、オプジーボ群のほうが長くなりましたが、大きな差ではありませんでした。

2.メルクもキイトルーダの臨床試験を中間報告

オプジーボの競合薬であるキイトルーダに関しても、メルクからリリースが発表されました。この中で、KEYNOTE-021試験(現在フェーズⅠ/Ⅱ)において、非小細胞肺がんの非扁平上皮がんで、キイトルーダ、カルボプラチン、ペメトレキセド(後の2つは化学療法剤)の併用剤の奏効率(治療患者総数に対する完全奏効(腫瘍が完全に消失した状態)と部分奏効(腫瘍が全体の30%以上消失した状態)の患者数の比率)が55%だったのに対して、化学療法剤単独では29%でした(いずれもPD-L1発現率の制約をつけない)。

3.非小細胞肺がんファーストラインの併用療法では結論は出ていない

これらの報告を受けて、10月10日のニューヨーク市場でメルク株が1.8%上昇し、BMS株は9.5%下落しました。11日の東京市場では小野薬品株も11.0%下落しました。CheckMate026試験の速報は既に公表されているため、私見ですが、メルクのKEYNOTE-021試験のインパクトが大きかったよう思われます。つまり、非小細胞肺がんファーストラインでは、単剤だけでなく、併用剤でもキイトルーダがオプジーボに対して優位に立ったという印象が出てきたと思われます。

ただし、必ずしもそうではないというのが私の見方です。まず、非小細胞肺がんファーストラインについて、オプジーボとキイトルーダを単剤での使用について比較すると、PD-L1発現率5%以上のオプジーボは結果が出ず、PD-L1発現率50%以上の制約があるキイトルーダは十分効くという臨床試験の結果が出ています。

一方で、併用剤については、BMS=小野薬品のCheckMate-227試験がフェーズⅢで進行中です(終了予定は2018年1月)。オプジーボ単剤、オプジーボ+ヤーボイ(いずれもPD-L1発現率1%以上)、オプジーボ+ヤーボイ、オプジーボ+化学療法剤(カルボプラチン、シスプラチン、ゲムシタビン、ペメトレキセド)(いずれもPD-L1発現率1%未満)を比較します。上述のメルクのKEYNOTE-021試験は2016年11月までフェーズⅠ/Ⅱで、その後フェーズⅢに移行すると思われます。フェーズⅢに2~3年かかることを考えると、もし、BMS=小野薬品のCheckMate-227試験が成功すれば、BMS=小野薬品が非小細胞肺がんファーストラインで広い範囲の患者に効くことが期待される併用剤治療で優位に立つことになります。

非小細胞肺がんファーストラインの単剤での治療はキイトルーダが優位にはなっていますが、PD-L1発現率50%以上の患者に投与するという制約があるため、切り捨てられる患者が多くなることに難点があります。併用剤治療についてはまだ臨床試験が行われているところですので、決着は付いていないと思われます。ただし、KEYNOTE-021試験のフェーズⅢでも結果が良い場合は、フェーズⅢが早期終了になる可能性もあります。その場合は、とりあえず非小細胞肺がんファーストラインでのキイトルーダの優位性が決まることになります。この問題はまだまだ予断を許しません。

4.小野薬品に対する投資判断は変えない

9月30日付け、10月7日付けの楽天証券投資WEEKLYでの小野薬品工業に対する投資判断、即ち3,500~4,000円までの戻りの相場が期待できるという投資判断は変えません。

非小細胞肺がんファーストラインの臨床試験の結果は、まずCheckMate-227試験の結果を待つ必要があります。227試験が失敗なら、小野薬品単独で、日韓台の3ヶ国で独自に臨床試験を行うことになると思われます。結論が出るには時間がかかります。

一方、非小細胞肺がんファーストライン以外のがんに対する臨床試験の結果、あるいは中間報告は今のところいずれも良好で、これは株価にとって好材料です。

ただし、これは薬品バイオ株全体に言えるリスクですが、臨床試験の失敗リスク、学会での発表による株価変動リスクは常に考慮する必要があると思われます。

セクターコメント:電子部品

1.サムスン電子が「ギャラクシーノート7」の生産、販売を中止した

サムスン電子は8月19日にスマートフォンの最上位機種「ギャラクシーノート7」を発売しました。ところが発売後直ぐに発火事故の報告が相次ぎました。当初は電池の問題と思われていましたが、時間が経つに連れて回路設計のミスではないかと言われるようになりました。サムスン電子は、9月2日にギャラクシーノート7を回収、交換すると発表し、10月1日にそれまで中止していた販売を再開しました。しかし、その後も交換後の端末からの発火がアメリカ、韓国、台湾で報告されました。そして10月11日、遂にギャラクシーノート7の生産販売の打ち切りが発表されました。

ギャラクシーノート7は価格が約10万円とiPhone7シリーズと競合する高級スマホです。表5のように、世界のスマートフォン市場ではサムスン電子が1位でアップルは2位です。サムスン電子がクリスマス商戦を前にして旗艦製品のギャラクシーノート7の生産販売を中止することになったことは、同じ高級スマホカテゴリーに属するiPhoneのシェア上昇に結び付く可能性があります。

表5 スマートフォンのメーカー別出荷台数と市場シェア

2.大手電子部品株に投資妙味

電子部品の観点から今回の動きを見ると、日本の大手電子部品メーカー、村田製作所、TDK、アルプス電気、ソニーの得るものは大きいと思われます。サムスン電子は、系列に大手電子部品メーカーであるセムコ(サムスン・エレクトロニック・メカニクス)や電池会社(サムスンSDI)を抱えており、アップルや中国スマホメーカーのように電子部品の全量を外部の電子部品メーカーに発注するわけではありません。今回の発火事故で最初に原因を疑われた電池には、サムスンSDIとTDKの電池が使われていた模様です。

したがって、サムスン電子のシェアが低下し、アップルと中国スマホメーカーのシェアが上昇することになれば、日本の電子部品メーカーには直接利益になると思われます。

また、12月には当初はiPhone独占という形で任天堂のスマホゲーム「スーパーマリオラン」が配信開始されます。アップルの立場から見ると、良好な販売環境でクリスマス商戦を迎えることになります。村田製作所、TDK、アルプス電気、ソニーに注目したいと思います。

各社の注目点は、村田製作所は、チップ積層セラミックコンデンサ(電圧制御を行う。電子機器に多用される)、SAWフィルタ(電波のノイズを取り除く。スマートフォンのグローバルモデルは10本以上の電波を拾うため、ノイズも多くなり、SAWフィルタの搭載個数も多くなる)など重要部品でトップシェアを持っていること、TDKはスマホ向け電池に強く、それ以外の重要部品のシェアも高いこと、アルプス電気は高級スマホ用アクチュエーターで世界トップであること(iPhone7シリーズは手振れ補正用アクチュエータが全面採用され、iPhone7Plusにはデュアルカメラが採用された)、ソニーはスマホ用高級イメージセンサーで世界トップであり、iPhone7シリーズではカメラの性能が大幅に向上していることです。

表6 主なスマートフォン用電子部品の概要

本レポートに掲載した銘柄

デンソー(6902)、アイシン精機(7259)、ルネサス エレクトロニクス(6723)、クラリオン(6796)、SCSK(9719)、富士ソフト(9749)、小野薬品工業(4528)、村田製作所(6981)、TDK(6762)、アルプス電気(6770)、ソニー(6758)