外国為替市場は、世界最大のマーケットです。

国際決済銀行(BIS)の2013年の調査によると、外国為替市場の1日の平均取引高は約5.3兆ドル。世界貿易額の1日平均取引額は約1,000億ドルです(輸出・輸入合計、365日ベース)。このように貿易額をはるかに上回る金額が外国為替市場で取引されています。外国債券や海外投資の資本取引や投機資金が経済理論を超えたマネーの動きを作り、時にはオーバーシュート(行き過ぎた動き)をします。

外国為替市場の参加者は?

それではこのような巨大市場の参加者はどのような人達でしょうか。下図を見て下さい。

まず、外国為替取引は銀行が主体となります。あらゆる参加者は、最終的に銀行と取引をすることになります。輸出や輸入の事業会社、商社、海外債券や海外株式に投資する生保、損保、年金などの機関投資家、そして個人投資家などは銀行を通して外国為替、例えばドル円の売買をすることになります。銀行は、これら顧客と取引を行い、その取引の処分のために他の銀行と取引をします。銀行は、直接銀行同士の取引を行ったり、ブローカーや電子ブローキングを通して他の銀行と取引を行います。これらの市場は銀行間市場(インターバンク市場)と呼ばれています。また、銀行は海外の銀行と取引をしたり、また、海外の事業会社や投資家が日本の銀行と取引を行う場合もあります。そして外為市場を管理する当局(財務省、日銀)が、時には介入という形で外国為替市場に参加してきます。市場介入は、財務省の指示で日銀が行うことになります。それでは主要参加者の特色を見てみます。

輸出会社
ドルの売り手になります。
自動車や、電機、機械などを輸出することによって、その代金としてドルが入ってきます。そのドルを出来るだけ円安の時に売ろうとします。また、円安時に先日付の予約をする形で大量にドルを売ることがあります。
輸出企業の採算レート(社内レート)などが時々新聞に出てきますが、覚えておくと参考になります。この為替水準以上だと日本の輸出企業がドル売りに出てくるな、と相場予想のシナリオを描くことが出来ます。
輸入会社
ドルの買い手になります。
代表は石油会社です。震災以降、火力発電の増加、石油の値上がり、円安によって購入代金がかなり増えてきました。この結果、膨大なドル買いを行う必要があるため、円高に相場が動くとすかさずドルを買ってきます。従って、東京市場ではドル安のストッパー的な役割となっています。急激に相場が円高に動く時、輸入会社がドルを買ってくるなというシナリオを描けます。
商社
ドルの売り手にも買い手にもなります。
日本の貿易を担ってきた会社ですから外為市場では主要プレーヤーになります。最近は、資源開発投資や資源輸入に力を注いでいるため、資源通貨や資源の動きに影響を与えることがあります。商社の新聞記事などは目を通しておくと役に立つことがあります。
機関投資家
生保、損保、公的年金、投資顧問会社などは投資の分散として海外債券や海外株式に投資します。新規投資の時はドル買いとなります。
また、利金や配当が入ってきた時、満期・償還の時はドル売りになります。機関投資家は年度初めに新規投資や国内と海外の投資比率を変えたりします。海外比率が増えるとドル買いになります。春先には、この関連の記事がよく出てきますので注目です。また、昨年秋のニュースで、政府は約1兆3000億ドルの外貨準備の運用の一部を民間に託すことを検討するとの記事がありました。これが実現することにより市場に与えるインパクトが大きくなりそうです。この関連のニュースは今後も注目する必要があります。
個人投資家
個人投資家は、今やメジャープレーヤーとなりました。リーマンショックの後、ミセス・ワタナベという代名詞となって日本の個人投資家は海外で注目されるようになりました。外為証拠金会社、いわゆるFX会社を通して売買する個人投資家の取引高は東京市場の1/3にまで占めるようになってきました。そのため、彼らの動向は相場予想をする上で注目する必要があります。数年前は、ドル買いからしか入ってこなかった特徴がありましたが、今やドル買いもドル売りも相場に対して臨機応変になってきています。また、海外の投機家は順張りといって相場の流れに沿って売買する特性があるのに対し、日本の個人投資家は逆張り(現在の相場の流れに逆らって売買すること)が好きなようです。
また、個人投資家はFX会社を通した取引以外にも外貨預金や投信を買う形で取引が増えてきています。新規購入はドル買い、解約はドル売りになります。かなり円高に動いた時は、これらの新規購入が増大する傾向があります。海外旅行用のキャッシュやトラベラーズチェックを買う動きも出てきます。おもしろい話があります。銀行の支店でキャッシュやトラベラーズチェックが売り切れる時があります。その翌日には円安に反発することが多いようです。
ヘッジファンド
1990年代前半から相場を大きく動かす集団として有名になってきましたが、現実には、後追いのニュースでしか彼らの動きはわかりません。大きなイベントがあった時、金融政策が大きく変わる時、G7やG20で枠組みが変わる時などには順張りで動いてきます。また、短期志向が多いファンドが多いため、四半期決算、半期決算、年決算の時などは留意しておく必要があります。