積極的に資産を増やしたいかどうかで投資すべき銘柄は異なる

今回は、長期的な上昇相場が見込めそうなとき、筆者がどのような目線で投資対象とする銘柄を選んでいるかをお話したいと思います。銘柄選びで悩んでいる個人投資家の方に少しでも参考になれば幸いです。

銘柄によって株価の動きはマチマチです。あまり大きく上昇しないが大きな下落もしない、という、比較的値動きの安定した銘柄がある一方、上がるときも下がるときも大きい、という値動きの激しい銘柄もあります。

すでにある程度の資金を持っていて、「増やす」よりは「減らさない」ことを重視する個人投資家の方には、値動きの安定した銘柄の方がよいでしょう。

でも、多少のリスクは覚悟の上で株式投資で積極的に資産を増やしたい、という個人投資家にとっては、値動きが大きい銘柄の方が向いています。

筆者も、上昇相場では株価の変動が大きい銘柄でできるだけ効率的に資産を増やしていきたいと思っています。

株価が大きく下がった銘柄に注目しよう

以前のコラムで、筆者がどのようにして日本写真印刷株(7915)を上昇初期のまだ安い株価で買うことができたかをお話ししましたが、そもそもなぜ筆者が日本写真印刷株に注目していたかといえば、「株価が高値から大きく下落していたこと」が1つの大きな理由です。

日本写真印刷株は、2008年6月には6,410円の高値をつけました。その後2009年2月に2,100円、2009年12月に5,440円と乱高下を繰り返しながら、2012年11月には551円まで株価は急落しました。2009年12月の戻り高値5,440円から、たった3年で株価は10分の1になったのです。

もちろん、株価がここまで短期間に急落したのは、業績が急速に悪化したからです。でも、「株価が高値から大きく下落した」という事実には、表と裏の2つの意味が込められていることに、皆さんはお気づきでしょうか。

「株価の大幅下落」の裏に隠れたもう1つの意味とは?

「株価大幅下落」の意味は、表向きにはもちろん「業績が悪化したために株価が下がった」ということです。しかしもう1つの裏の意味こそが非常に重要です。それは、「過去は株価がそんなに高く買い上げられるほど業績が良かった」ということです。

このことから、業績悪化により売り込まれた銘柄は、ひとたび業績が回復すれば、株価は底値から大きく上昇するポテンシャルを秘めているといえます。もちろん、業績が急速に悪化し、今後も業績の回復が全く見込めない銘柄であれば話は別ですが、そうした銘柄は中長期的な上昇トレンドにはなりにくいでしょうから、株価のトレンドに注目しておけば大丈夫です。

また、景気や商品市況によって業績が大きく変動する銘柄(不動産株、鉄鋼株、海運株、商社株など)や、株式市場が活況かどうかで業績が様変わりする証券株などは、株価もそれに応じて大きく乱高下しますので長期保有するには不向きです。でも、株価のトレンド(まさに景気の波や株式市場の状況を表している)に応じて買い・売りのタイミングを見計らうことで着実に利益を積み重ねていくことができます。

筆者が注目するのは「不動産株」と「証券株」

業績の回復により株価の大きな上昇が見込めるという点で筆者が個人的に大いに注目しているのが、「不動産株」と「証券株」です。これらは、上昇相場で個人投資家が大きく利益を上げるにはもってこいの業種ではないかと思います。

不動産株、特に中小・新興不動産株は、不動産市況による業績の変動幅が非常に大きく、とにかく値動きの激しさは尋常ではありません。そのため、売り買いのタイミングに失敗すると大きな損失を被るリスクがあるものの、タイミングさえ間違わなければ非常に大きな利益をもたらしてくれます。

以前のコラムで触れたサンフロンティア不動産(8934)も、2006年2月高値396,663円(分割調整後株価)から2011年8月安値6,930円まで、何と57分の1に下落しました。しかし業績が底打ちしてひとたび上昇に転じた時のパワーも大きく、2013年3月の132,000円まで、1年半で19倍に上昇しています。底値で買うことができなくとも、上昇トレンドの初期に買っていれば、すでに買値の5倍以上にはなっているはずです。

以前のコラムでは、「長期的には126,000円を目指す」と書きましたが、コラム執筆時の30,000円前後の株価からたった4カ月で長期的な株価目標126,000円さえ超えてしましました。このダイナミックな上昇こそ、不動産市況が回復し業績が底打ちした不動産株の醍醐味です。

証券株は、日経平均株価やTOPIXといった日本株全体の状況を表す株価指数に業績がおおむね連動するだけでなく、特に中堅やネット証券は株価の変動も激しいのが特徴です。そのため、株価指数の上昇トレンドが続く限りは保有し、トレンドが転換したら利食いして次のチャンスを待つ、これだけでかなりの投資成果を得ることができるはずです。

「小泉相場」の高値と今の株価を比べてみる

小泉総理時代に日本株が大きく上昇した際、多くの銘柄が2005年後半~2006年前半にかけて高値を形成しました。筆者は銘柄選択基準の1つとして、当時の高値が現時点の株価の何倍の水準にあるかを見て、この倍率が高い銘柄を優先して投資対象としています。

例えば、電線株の業界トップである住友電気工業(5802)と、2番手である古河電気工業(5801)の両社につき、今年3月15日の終値と、2006年前半の高値を比べてみることにしましょう。

  • 住友電気工業:3月15日終値 1,187円  2006年1月高値1,962円 1.6倍
  • 古河電気工業:3月15日終値  219円  2006年2月高値1,125円 5.1倍

もし、両社の株に100万円を新規投資して、今後両社が2006年はじめの株価水準に戻ったとしたならば、住友電気工業株は160万円になる一方、古河電気工業株は510万円にまで増える計算です。このように考えて、筆者は住友電気工業株より古河電気工業株を買う、という判断をしているのです。

もちろん今後の業績如何で住友電気工業の株価が何倍にも上昇する可能性もありますし、古河電気工業の株価があまり上昇しないという可能性もあります。ただ、一般的に、株価のボラティリティ(変動幅)は業界トップより2番手以下の方が高くなることが多いのも事実です。業界トップの銘柄は2番手以降の銘柄よりも比較的業績のブレが小さいため、株価の変動も緩やかになる傾向が高いからです。

最後に1つだけ注意点をあげておきます。上記の不動産株や証券株をはじめ、株価が高値から大きく下落した銘柄が上昇トレンドに転じた際の上昇率は目を見張るものがある一方、再度下落トレンドに転じときは再び株価が大きく下落する恐れが高いため、長期保有にはあまり向いていません。必要に応じて利食い・損切りをしっかりと実行するようにしてください。