2022年の金(ゴールド)国際相場は「上昇」

 小規模会場での講演では数十席ある席が埋まり、立ち見の方もおられました。こうした環境の中で「徹底議論!王道の金(ゴールド)、裏道のプラチナ」と題して講演をしました。その中で、集まった皆さまに「2022年の金(ゴールド)の国際相場は上昇・下落?」という問いを投げかけ、上昇・下落、いずれかに挙手をしていただきました。

 2022年が、ウクライナ戦争が勃発したり、インフレ(物価高)が目立ったりした年であったことを手掛かりに、ほとんどの方が「上昇」に手を挙げられましたが、正解は、以下の図のとおり「下落」でした。

 金(ゴールド)の国際価格は、1,820.10ドル(2021年12月31日)から1,812.35ドル(2022年12月30日)に下落しました。ここでは、現代の金(ゴールド)相場が有事だけで動いていないこと、複数のテーマが同時進行していること、これらがもたらす上昇・下落の圧力を相殺しなければならないことを、述べました。

図:金(ゴールド)相場の核心部を照らす超良問とその解答

出所:LBMAのデータを基に筆者作成

 以下の図は、その2022年の金(ゴールド)市場の環境を示しています。複数のテーマとは、短中期の時間軸に関わるテーマ、有事ムード、代替資産(株の代わり)、代替通貨(米ドルの代わり)の三つです。確かに2022年は、有事ムードと代替資産起因の上昇圧力はあったものの、代替通貨起因の強い下落圧力に相殺され、価格が下落しました。

 先ほどの図「情報の受け手と発信者の関係と市場への影響」で触れた情報を取り巻く変化は社会における大きな変化の一つです。これを含むさまざまな変化が市場環境を大きく変え、その結果、以前の常識が通じなくなったケースは他の市場でも散見されています。金(ゴールド)市場だけが変化したのではなく、それを取り巻く社会全体が変化したのです。

2022年の金(ゴールド)国際価格下落の背景

出所:筆者作成