米国市場の「高配当利回り株」のランキング(降順)に注目
上記したように、金融当局や市場の認識(見通し)に多少のぶれやズレはみられるものの、大局的な視点に立てば、インフレの減速を確認しつつ政策金利や債券金利は来年にかけて低下傾向をたどりそうです。米国市場ではMMF(マネーマーケットファンド)に約6.09兆ドル(約950兆円/ICI:米投信業協会集計)に及ぶ巨額な待機資金があります。
中期的視点ではMMFの利回りは短期金利の動きに沿って低下していくとみられます。欧米の古くからのことわざに「A bird in the hand is worth two in the bush」(手の中の一羽の鳥は、繁みの中の2羽の鳥の価値がある)があります。
利回りの高さを重視した投資ニーズを象徴する「手の中の鳥理論」(The bird-in-hand-theory)として知られます。「やぶの中(遠くで)で見え隠れしている2羽の鳥(値上がり益)は不確かだが、手の中で(足元で)比較的高い利回りの収入(インカム)を提供してくれそうな投資対象の方が着実」との投資スタイルを表現したものです。
将来、手に入れられるかどうか分からない多くのものより、確実に手に入れられるものの方が良いとの考えは、日本のことわざにも「明日の百より今日の五十」があります。
こうした利回り重視の投資対象として評価されやすいのが「高配当利回り株」といえるでしょう。
図表3は、S&P500の構成銘柄の中でも特に時価総額が大きい100社で構成されるS&P100種指数を構成する銘柄群をユニバース(銘柄選別母体)とし、予想配当利回り(市場予想平均)の降順(高い順番)にランキングして上位10銘柄を一覧にしたものです。業種別では「たばこ」、「無線通信」、「大手製薬」など安定成長業種が多いことが分かります。
株式配当利回りが5%以上の銘柄(配当利回り水準で1位のアルトリア・グループは8.8%)について複数業種に分散して投資し、世界の基軸通貨である米ドルの不労所得(米国企業は四半期配当が基本)を重視していく「バリュー株投資」にも注目したいと思います。
<図表3>米国市場の大型株で配当利回りをランキングする
# | ティッカー | 銘柄名 | 業種 | 直近株価 (ドル) |
年初来 騰落率 |
予想配当 利回り(*) |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | MO | アルトリア・グループ | たばこ | 45.87 | 13.7% | 8.8% |
2 | VZ | ベライゾン・コミュニケーションズ | 無線通信 | 39.77 | 5.5% | 6.8% |
3 | T | AT&T | 無線通信 | 17.61 | 4.9% | 6.4% |
4 | PFE | ファイザー | 大手製薬 | 27.66 | ▲3.9% | 6.1% |
5 | BMY | ブリストル マイヤーズ スクイブ | 大手製薬 | 42.41 | ▲17.3% | 5.7% |
6 | F | フォード・モーター | 自動車 | 12.08 | ▲0.9% | 5.4% |
7 | SPG | サイモン・プロパティー・グループ | 商業施設REIT | 153.16 | 7.4% | 5.2% |
8 | PM | フィリップ・モリス・インターナショナル | たばこ | 102.65 | 9.1% | 5.1% |
9 | DOW | ダウ・インク | 総合化学品 | 56.25 | 2.6% | 5.0% |
10 | USB | USバンコープ | 銀行 | 39.28 | ▲9.2% | 5.0% |
*予想配当利回りはBloomberg算出による市場予想平均 (出所)Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2024年6月12日) |
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