米地銀経営不安が波乱要因に浮上

 しかし、先月、米地方銀行のニューヨーク・コミュニティ・バンコープ(NYCB)の2023年10-12月期決算発表後の株価急落をきっかけに、米地銀の経営不安が再び経済や市場の波乱要因に浮上してきました。金利の高止まりによって預貸利鞘の縮小や商業用不動産向け融資の不良債権化リスクが改めて警戒されています。

 金融引き締めの効果が時間差で体力が弱い地銀だけでなく、中小企業、個人の住宅ローンや自動車ローン、カードローンに及んでくると、「予測が劇的に変わるようなこと」が起きて経済の軟着陸シナリオが狂ってくる可能性があります。その場合、3月のFOMCも含めた連続利下げというシナリオが浮上してくるかもしれません。

 最近公表されたIMF(国際通貨基金)(1月)やOECD(経済協力開発機構)(2月)の世界経済見通しは2024年の世界経済の成長率を昨秋より上方修正しました。その中で米国の成長率は大きく上方修正されています(IMF:0.6%引き上げの2.1%<> OECD:<0.6%増引き上げの2.1%>)。

 そして成長を阻害するリスクとしてインフレ再燃や、中東の地政学リスクを挙げていますが、米国の地銀経営不安再燃が浮上したように金利高止まりによる時間差の悪影響もリスクとして加えた方がよさそうです。

米早期利下げ観測後退、日銀が政策修正する「千載一遇の状況」

 米国の3月利下げ観測が後退したことは、日本銀行にとって大規模金融緩和からの政策修正をしやすい環境になったのかもしれません。日銀は3月の賃上げ動向を見極めてから政策修正に踏み切りたいようですが、もし、FRBが3月までに利下げに踏み切った場合、日銀は政策修正のタイミングを探る際に為替動向などかなり神経質になることが予想されます。

 米国の利下げはドル安、日銀のマイナス金利解除(利上げ)は円高ということになり、日米の政策変更のタイミングが近いと、大きく円高に反応するかもしれないからです。FRBの利下げ時期が後退すればするほど、日銀は為替動向を気にせず、賃上げ動向や物価動向を余裕を持って見極めることができます。

 日銀が1月22~23日に開催した金融政策決定会合の発言内容をまとめた「主な意見」でもその点は指摘されています。ある政策委員は「海外の金融政策転換で政策の自由度が低下することもあり得る」と指摘し、今が正常化に動く「千載一遇の状況だ」との考えを示しています。

 「主な意見」では、物価2%目標達成について「賃金と物価の好循環実現の確度はさらに着実に高まった」といった見方が広がったようです。そして金融正常化については、「マイナス金利解除を含めた政策修正の要件は満たされつつある」と手応えを示す声が多く上がったようです。政策変更に向けた議論が本格化していることが分かります。

 FRBの3月利下げ観測は後退し、日銀の3月か4月の政策修正期待がより高まってきました。市場にはかなり織り込まれてきましたが、それでも3月が近づくにつれて、ドルの上値は重たくなってくるかもしれません。