注目イベントの「答え合わせ」その[1]~米企業決算~

 日米の株式市場は昨年11月から上昇基調を描いて行きましたが、当初は、米国の金融政策の利下げ観測の高まりを背景に米金利が低下し、PER(株価収益率)面での割高感が修正される動きだったのが、現在では、米金利が再び上昇する中でも一部のハイテク企業を中心に、業績(EPS(1株当たり利益))の拡大期待によって買われて株価が上昇する動きとなっています。

 そのため、先週は相場の牽引役だった米大手IT企業の決算が注目されました。前回のレポートでは、マイクロソフト(MSFT)アルファベット(GOOGL)アップル(AAPL)アマゾン(AMZN)メタ・プラットフォームズ(META)の銘柄を採り上げ、チャートで確認しました。

 結論から言ってしまうと、それぞれの決算はいずれも増収・増益となりました。しかし、メタ・プラットフォームズとアマゾンは株価が大きく上昇した一方で、マイクロソフトは小幅な上昇にとどまり、アップルとアルファベットについては下落するなど、決算発表後の株価の動きに温度差が生じており、今後は銘柄の選別が進んでいきそうな雰囲気となっています。

 その中でも、とりわけ上昇が目立ったのはメタ・プラットフォームズです。

図2 米メタ・プラットフォームズ(META)週足とMACDの動き(2024年2月2日時点)

出所:MARKETSPEEDIIを元に筆者作成

 上の図2はメタ・プラットフォームズの週足チャートですが、ローソク足を見ても分かる通り、大きな陽線が出現しています。

 決算を受けた週末2日(金)の取引で前日比20%を超える大幅上昇となり、最高値を大きく更新しています。決算では、主力のネット広告事業が好調で純利益が前年同期比で3倍に拡大したほか、初の配当を実施すると発表したことが好感されました。

 反対に、冴えない値動きとなったのがアップルです。

図3 米アップル(AAPL)週足とMACDの動き(2024年2月2日時点)

出所:MARKETSPEEDIIを元に筆者作成

 厳密に言うと、アップル株については、決算を受けた直後の2日の取引では一段安値で始まった後に値を戻して終了しています。金融機関による投資判断の引き下げが相次いだことや、中国で販売する製品の値下げ発表などで、事前に株価が調整する場面があったため、決算発表で「いったんの材料出尽くし」となった可能性があります。

 とはいえ、図3にもあるように、先週のローソク足が下ヒゲの長い陰線となっているため、株価の反発基調に戻せるだけの買いの強さには至っていません。

 このように、いわゆる「マグニフィセント・セブン(M7)」と呼ばれる銘柄(マイクロソフト、アルファベット、アマゾン、アップル、メタ・プラットフォームズ、テスラ、エヌビディア)のうち、6銘柄が決算を終えたわけですが、株価の反応には明暗が分かれています(ちなみにエヌビディアの決算は2月21日の予定です)。

 いずれの銘柄もナスダックに上場しているため、今後もこうした温度差が生じた値動きが続いた場合、株価指数の牽引役がさらに絞られていくことになり、ナスダックが最高値を更新するまでのハードルが少し高くなるかもしれません。

図4 米ナスダック日足の多重移動平均線とMACDの動き(2024年2月2日時点)

出所:MARKETSPEEDIIを元に筆者作成

 実際に、上の図4のチャートでも確認すると、先週末2日のナスダックの終値(1万5,628p)から最高値(2021年11月22日の1万6,212p)までの584pを埋めて行けるかが焦点になります。

 多重移動平均線の傾きと束の幅を見る限りではまだ上昇基調が続いていますが、株価とMACDが向いている方向が反対となる「逆行現象」も出てきているため、トレンド転換の可能性を示すサインも出現しています。

 さらに、米国の企業決算絡みでは、「米地方銀行への不安」という気掛かりな兆候も出てきています。

図5 米ニューヨーク・コミュニティ・バンコープ(NYCB)日足とMACDの動き(2024年2月2日時点)

出所:MARKETSPEEDIIを元に筆者作成

 上の図5は、米地銀大手のニューヨーク・コミュニティ・バンコープ(NYCB)の日足チャートです。

 同行は、昨年3月の金融不安の際に破綻したシグネチャー銀行から預金部門を買い取った地銀の「勝ち組」とされていたのですが、先週1月31日に発表された決算が予想外の赤字となり、株価が急落する動きとなりました。図を見ても分かるように、2月1日には大きな「窓」を空けて、5.51ドルの安値をつける場面がありましたが、昨年3月の安値をも下回っています。

 商業用不動産融資の焦げ付きや、貸倒引当金の積み増しなどの影響が業績悪化の理由ですが、商業用不動産の市況悪化については、今のところ景気後退というよりは、コロナ禍によるリモートワークの普及など、社会構造の変化の面が大きいため、米国の経済全体への影響は限定的となる見方もあります。

 しかし、ドイツ銀行やあおぞら銀行など、海外の銀行の決算にも影響を与え始めているため、多少の懸念拡大は想定しておいた方が良いかもしれません。