好調な米国株に潜む「罠」に注意(2)~景況感~

 そして、もうひとつのバランスの変化は「ソフトランディング見通し」の揺らぎです。

 足元の相場は、このソフトランディング見通しに対してかなりの自信を持っていることが感じられますが、実際のところ、こうした自信とは裏腹に、景気見通しは簡単に覆ってしまうことも珍しくありません。

 今では米国経済の強さが当たり前のようになっていますが、年初の段階では、「ゼロコロナ政策を解除した中国の景気が急回復し、金融引き締めを続けてきた米国は景気減速する」という見通しが優勢だったのが良い例です。

 また、先ほどの利下げの先取りとも関連しますが、足元では利下げ回数が論点になっています。これは0.25%の利下げ幅を指し、2024年の米国景気が「ソフトランディング」シナリオ通りに進むのであれば、景況感に応じて小刻みな利下げを行っていくことになります。

 反対に、景気後退の勢いが想定よりも強くなってしまうと、利下げ幅が0.5%や0.75%といった具合に大きくなっていきます。

図5 S&P500と米FF実行レートの推移

出所:Bloombergデータ、FREDデータなどを元に筆者作成

 上の図5は、S&P500(対数表示)と米FF実効レートの推移を示したものです。

 図のグレー色の部分は景気後退局面、薄い赤色の部分は、金利の利上げ打ち止めから利下げに転じるまでの期間です。

 図5から読み取れるのは、金利が利下げに転じてしばらくたつと景気後退局面に入っていること、そして、景気後退局面において利下げのペースが早くなるタイミングで株価も大きく下落していることです。

 実は、「緩やかな景気後退の状況に合わせて、0.25%ずつ段階的に利下げしていく」というのはかなり難易度が高く、利下げが実行段階となった際には、回数ではなく、利下げ幅の方が注目されることになります。

 そのため、米国に限らず、景況感についてはあまり楽観視せずに冷静に見極めていくことが重要です。