2024年はドル安円高に緩やかに移行か

 日米の金融会合が終わり、1ドル=145~150円のレンジには戻らず、140~145円のレンジで推移しています。年内、このままレンジ内に収まれば、来年は1ドル=140円割れが視野に入ってきそうです。

 日銀の1月の政策修正期待が後退し、春闘の結果が明らかになる4月以降の会合での政策修正期待が高まっています。

 しかし、欧米は3月にも利下げするのではないかとの市場の期待が強まっているため、今後、ドル円を動かす要因としては日銀要因による円高進行よりも欧米要因によるドル安、ユーロ安の方が大きいことが予想されます。ドル安、ユーロ安がどの程度進むのかが注目されます。

 先日のFOMCで利下げ材料が大きくなったことから、今後は、金利低下、ドル安の流れになってくることが予想されます。

 また、ECB(欧州中央銀行)のラガルド総裁は、利下げは議論していないと発言していますが、ユーロ圏の物価が急低下しており、景気も振るわないとなると、米国よりも早く利下げに転じる可能性があります。利下げ転換によるユーロ安はドル高となり、一時的にドル/円は円安バイアスがかかりますが、日銀の政策修正期待が働くことによって円安バイアスは抑制され、円は対ユーロではユーロ安円高となり、対ドルでの円高を後押しすることが予想されます。

 FRBの利下げについては、15日のNYウィリアムズ連銀総裁の発言やその後のFRB高官の同様の発言に見られるように、FRB内部でも利下げはまだまだ議論中の段階で、市場が期待する来年3月までには、ドル相場も上下に動くことが予想されます。

 ただ、米国は緩和方向、日本は引き締め方向となれば、程度の差はあれ、これまでのバイアス(円安)と逆の方向(円高)に動きやすくなることは十分想定されます。

 2022年、2023年は日米の金融政策の明確な違い(米国引き締め、日本緩和)によって円安が進みましたが、年末にかけては逆の方向の動きが市場で意識され、年末要因もありポジション調整で円高が進みました。2024年はこの流れを引き継ぎドル安、円高地合いが基本となりそうです。

 ただ、絶対的な金利差の開きはあるため、円高も緩やかな円高となりそうです。

 前回のコラムでも触れましたが、12月の日銀短観の想定為替レート(全規模・全産業)は2023年度下期が1ドル=139.97円と前回9月調査の135.88円から円安となっていますが、現在の実勢レート(1ドル=144円)からは4円ほどの余裕しかありません。

 来年に向けて日米の金融政策が変わろうとしている局面では、1ドル=140円以上はしっかりと為替ヘッジ(ドル売り・円買い)をしていくことが予想されます。

 また、これまで円キャリー取引(低金利の円を調達し、円を売って高金利のドルを買う取引)を行っていた投資家も、ドル高円安に戻った時にはポジションを縮めるためにもドルの上値をしっかりと抑えてくることも予想されます(ドル売り・円買い)。これらの動きが起こるのであれば、ドルの上値は重くなり、相場地合いが変わったと判断することができます。