今こそ実情に即した分析手法を

 本レポートで述べてきたように、近年の原油相場を分析するためには、時間軸ごとに材料を分類した上で、それぞれの材料起因の圧力を相殺する必要があります。そうすることで初めて、価格動向の説明をしたり今後を見通したりすることができます(そうしないと説明できない値動きが大変多い)。

 このような説明をすると、しばしば「近年の原油相場は複雑化している」という返答をいただくことがあります。おっしゃることはよくわかります。複雑化していることは事実でしょう。ではなぜ、複雑化した(してしまった)のでしょうか。

 その一因を、取引参加者の数に見ることができます。以下は、CFTC(米国商品先物取引委員会)が公表している、先物市場で売買を行う「取引参加者(Traders:CFTCに報告義務がある機関投資家や売買を専門に行っている業者、生産者などの実需家など)」の数です。

図:NY原油先物市場における取引参加者の数

出所:CFTCのデータをもとに筆者作成

 足元の取引参加者の数(333)は、30年前(141)のおよそ2.3倍です。取引参加者はそれぞれ「思惑(≒意志)」を持っています(AIであれば売買方針)。取引参加者が多くなればなるほど、市場はさまざまな種類の思惑で満たされます。

 これは「市場が複雑化したこと」の一つの過程であるといえます。取引参加者が増えて複雑化した市場を分析するためには、過去の常識(単純さが正義)による分析が通じにくくなっていることを容認した上で、分析手法を自ら「ある程度」複雑化させる必要があります。

 ある程度複雑化した分析手法が、筆者が本レポートで述べた、時間軸ごとに材料を分類した上で、それぞれの材料起因の圧力を相殺する手法です。

 今一度「図:原油市場を取り巻く環境」および「図:2023年に目立った動向と2024年の予想」を参照の上、原油相場を見ていただけるとよいと思います。きっと、過去の常識にとらわれない、足元の実情に即した分析ができると思います。そうすることで、2024年の原油相場の動向がより鮮明に見えてくると考えます。

[参考]エネルギー関連の投資商品例

国内株式

INPEX
出光興産

国内ETF・ETN

NNドバイ原油先物ブル
NF原油インデックス連動型上場
WTI原油価格連動型上場投信
NNドバイ原油先物ベア

外国株式

エクソン・モービル
シェブロン
オクシデンタル・ペトロリアム

海外ETF

iシェアーズ グローバル・エネルギー ETF
エネルギー・セレクト・セクター SPDR ファンド
グローバルX MLP
グローバルX URANIUM
ヴァンエック・ウラン原子力エネルギーETF

投資信託

UBS原油先物ファンド
米国エネルギー・ハイインカム・ファンド
シェール関連株オープン

海外先物

WTI原油(ミニあり)

CFD

WTI原油・ブレント原油・天然ガス