60ドルから最大120ドルで推移か

「供給懸念と需要回復の両立」が、2024年の原油相場のテーマになると書きました。原油相場は上昇圧力が下落圧力を相殺する場面が多く、どちらかといえば上昇しやすい、と見ています。以下は2024年の原油相場のイメージです。(WTI原油)

図:2024年原油相場見通し(23年12月11日時点) 単位:ドル/バレル

出所:Investing.comのデータより筆者作成 

 2024年の原油相場は中国悲観論(需要動向:下落圧力)起因の下落圧力がかかるものの、産油国減産継続(産油国動向:上昇圧力)、欧米金融緩和観測(需要動向:上昇圧力)という「供給懸念と需要回復の両立」起因の上昇圧力に支えられながら推移していくと考えています。上値のめどが100ドル、下値のめどが60ドルです(2023年12月11日時点の予想)。

 産油国の動向における米国石油開発促進が米大統領選挙の選挙戦・結果に影響を受けて米国石油需要増加に変わったり(上昇圧力に転じる)、需要動向における中国悲観論が景気刺激策などで楽観論に変わったり(上昇圧力に転じる)した場合、全体として上昇圧力が特に大きくなり、価格は一段高になる(最大で120ドルを想定)可能性もあると見ています。

 下値のめどを60ドルとした理由の一つに、以下のIMF(国際通貨基金)が今年公表した主要産油国の財政収支が均衡するために必要な原油価格のデータが挙げられます。

図:主要減産実施国の財政均衡に必要な原油価格 単位:ドル/バレル

出所:IMF(国際通貨基金)のデータをもとに筆者作成 

 IMFの統計で確認できるOPECプラス(非西側産油国らで構成)の国々の財政収支が均衡するために必要な原油価格は、70ドル強です。この水準を大きく下回った状態が長引くと、その国の財政収支は大きく悪化すると考えられます。

 これらの国々はそのような事態を避けなければなりません。減産実施はそのための具体策だといえます。減産を実施している状態が変わらなければ、短期的にこの水準(70ドル強)を割ることはあっても、60ドルを割るなど、底割れすることはないと考えています。