スタンレー・ドラッケンミラーのポートフォリオ

 マイクロソフトの株価が高値をつける中、マイクロソフト株への投資を積み増している投資家がいる。資産家で著名投資家のスタンレー・ドラッケンミラーだ。ドラッケンミラーは以前より、AIの勢いは続くとの予想を示しており、AI企業を中心に保有を積極化している。

 ドラッケンミラーが運用するファミリーオフィスであるデュケーヌ・ファミリーオフィスが公開した2023年9月末時点のフォーム13Fからポートフォリオを確認してみよう。

2023年9月末時点のデュケーヌ・ファミリーオフィスのポートフォリオ

(緑:新規ポジション オレンジ:全売却)
出所:フォーム13Fより石原順作成

 ドラッケンミラーは、7-9月期にエヌビディアの持分を約7万5,000株売却した。この期間の株価をベースに考えると日本円にして50億以上に相当する額だ。ただし、売却後も評価額にして3億8,050万ドル相当(約87万株)を保有しており、時価評価ベースでは最大の持ち株である。

 期間中にエヌビディアの株価が上昇したことから、ポートフォリオ上のリバランスを目的とした売却だったのではないかと推測される。

2023年9月末時点のデュケーヌ・ファミリーオフィスのポートフォリオ上位10社(時価評価額順)

出所:フォーム13Fより石原順作成

AI関連株の保有株数の推移(単位:株数)

出所:フォーム13Fより石原順作成

 また、新たにアルファベット(GOOGL)の株式を約84万株取得した。過去に保有していたAI関連株に関して見ると、9月末時点でメタ・プラットフォームズ(META)TSMC(TSM)を全て売却した一方、マイクロソフトに関しては保有を増やしているのが特徴的だ。

 コンサルティング会社のマッキンゼー・アンド・カンパニーは6月14日、「The Economic potential of generative AI : The next productivity frontier(ジェネレーティブAIの経済的ポテンシャル:次の生産性のフロンティア」)」と題するレポートを公表した。

 63のユースケースを分析し、生成AIが世界経済にもたらす価値は年間2兆6,000億ドルから4兆4,000億ドルに上るとの試算を明らかにした。急速に進化するAIが世界に与える経済効果は、日本やドイツ、英国といった先進国並みの経済圏に相当するインパクトであることを示している。

 今年の5月にドラッケンミラーは、「2、3年後には信じられないようなチャンスが到来する」と述べ、「業界内には多くのばらつきがあり、チャンスが訪れるまで資金を温存しておくことが大切だ」と語った。 その時がくるまで、ドラッケンミラーはAI企業中心に投資を続けるということだろう。

 市場参加者は、市場が急落すればすぐにFRBが金利をゼロに戻すと信じているので、その確信に基づいてギャンブルを増やしている。現在抱えている負債は、将来的に低金利に転化できるため、リスクや信用拡大に制限はない。

 自社株買いや競合他社の買収など、最もリスクの高い信用拡大が、FRBは状況が揺らげばすぐに金利をゼロに戻してくれるという確信に基づいて行われている。

 この自信は、FRBの政策が参加者を極端なリスクと負債に追いやり、投機的バブルの膨張と崩壊を保証し、新たなFRB政策の極端さを要求するというフィードバックループをつくり上げることになった。言い換えれば、FRBは、FRBの「救済」への期待に基づき、最も非常識なリスクが「安全な賭け」に変わるという破滅のループをつくり出した。

 2000年、2008年、2023年、それはいつも同じだ。人々は愚かなリスクを冒し、失敗する。その後、お金が印刷(QE5)される。

経済の仕組み

出所:WALLSTREETSILVER

「私はこれまで見たこともない、これまで研究したこともないような、最大かつおそらく最も広範な資産バブルを直視している」

(スタンレー・ドラッケンミラー)