投機筋は日銀からバブルの延命の感触を得た!

 先週、『株式市場はここから年末にかけて上昇に転じる!?』というレポートを書いたが、10月31日の日銀のYCC(イールドカーブ・コントロール、長短金利操作)の再修正は小手先のもので、日銀は翌日から国債の買い入れを再開した。

 日本の大規模金融緩和とマイナス金利の継続を見て投機筋はバブルの延命を感じ取った。複数のブローカーが述べていたが、米国株が連騰している裏の要因は、「日銀が大規模緩和をしばらくはやめない」ということが大きいのである。

日本10年国債金利(日足)

(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)
出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター(メガトレンドフォローの売買シグナル)

S&P500CFD(日足)

(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)
出所:楽天MT4・石原順インディケーター(メガトレンドフォローの売買シグナル)

ナスダック100CFD(日足)

(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)
出所:楽天MT4・石原順インディケーター(メガトレンドフォローの売買シグナル)

NYダウCFD(日足)

(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)
出所:楽天MT4・石原順インディケーター(メガトレンドフォローの売買シグナル)

日経平均CFD(日足)

(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)
出所:楽天MT4・石原順インディケーター(メガトレンドフォローの売買シグナル)

 巨額の借金を持つ国において、インフレは政府の実質債務を減らすことができるが、金利上昇は利払い負担になるので望ましくない。しかし、金融市場で<国債を買い支える仕組み>をつくれば、インフレ下においても長期金利を低く抑えることが可能となる。政府にとっては実質借金額と利払い負担の両方を減らすことができるのである。

 金融市場で<国債を買い支える仕組み>が日銀のYCCである。

 したがって、市場に追い込まれない限り、日銀が自ら市場操作をやめる(国債市場を開放する)わけがないのである。出口などなく、いけるところまでYCC操作やそれに近いことを続けるということだ。

 このような市場が要求する水準よりも政策金利を低く抑えつける政策は、<金融抑圧政策>と呼ばれている。植田和男日銀総裁の一連の発言は、日本国債を買い入れて金融抑圧をやるための方便ではないだろうか?

「自由市場における活動や、債券や通貨の価格形成に干渉する政府の政策は何であれ、金融抑圧的な行為と見なすことができます。直接的な介入によって、あるいは一定の価格での債券や通貨の需要を変えるという間接的な介入によって、債券や通貨の市場価格を変えるように、政策を設計することができます。金融抑圧のもっとも一般的な動機として、政府が、痛みを伴う財政再編を行うことなく、負債発行による資金調達能力を向上させることがあります。負債調達コストを、自由市場で要求される水準より低く抑えることによって、政府は借り入れコストを軽減し、債務残高の増加ペースを遅らせることができるのです。金融抑圧は、【密やかなデフォルトの一形態】だと見なすこともできます。不換紙幣を発行する現代国家が、表面上は金利と元本を返済しつつも、債権者を割りの合わない目にあわせる紳士的な方法です」

(スコット・A・ マザー)

 日銀だけがインフレ下でマイナス金利と大規模金融緩和を続けているので、円安は止まらない。ドル/円が152円を超えれば、投機筋は当然介入ラインを試しに来る。まあ、介入してもその効果は5円程度の円安だというのが市場の値踏みである。

 しかし、岸田政権の支持率の低下は円安と連動しており、スタグフレーション(不景気の物価高)が進行し国民の不満が高まっている。時間稼ぎではあるが介入はするだろう。

 現在、ドル/円は日足、週足、月足のいずれもが買いトレンド相場という「ビッグトレンド相場」となっている。繰り返し述べるが、日本が金利を上げるか、あるいは、米国が金利を下げない限り、このトレンドは変わらない。

米国10年国債金利と日本10年国債金利(日足)

(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)
出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター(メガトレンドフォローの売買シグナル)

 日銀は、「2%の持続的・安定的な物価上昇の実現が、はっきりと視界に捉えられる状況にあると考えており、来年1~3月ごろには見極められる可能性もある」という路線を崩しておらず、少なくとも来年の4月まではマイナス金利を解除する気はないのだろう。

 いわゆる非伝統的な政策は、着手するよりも解体する方がずっと難しい。特に、こっそり解体しなければならないとなるとなおさらだ。日本が大幅な利上げをしなければならないような事態に追い込まれたとき、エブリシングバブルは崩壊するだろう。