「ドル高円安」から「ドル安円安」相場に移行

 今回の米CPI発表後、相場地合いは米CPI発表前の「ドル高円安」から「ドル安円安」という構図に変わった点に留意する必要があります。

 ユーロ相場は、ドル安ユーロ高の影響から1ユーロ=163円台に円安ユーロ高が進みました。ユーロの対円での上昇がドル安円高にブレーキをかけている構図です。円安ユーロ高で推移している限り、ドル安円高も抑制的な動きになる可能性があります。

 しかし、米国で見られているような物価の低下や景気後退は、早晩、欧州でも見られ(欧州では既にマイナス成長ですが)、金融引き締めから緩和に転じる可能性が高いため、対円でのユーロ上昇という円安要因はやがて剥落していくと思われます。

 一方で、15日に発表された日本の2023年7-9月期GDP(国内総生産)は2.1%減と、市場予想の0.6%減を大きく下回りました。このマイナス成長によって日銀の緩和は長引くとの見方が広がる可能性があり、そうなると円安地合いが長引く可能性もあります。

 今後、日米欧の景況感の変化や景気後退のスピードによってどの通貨が弱いか、あるいは弱くなるかという点にも留意していく必要があります。

米国債と米議会ガバナンスの動きが今後も波乱材料に?

 ドルの要因として金融政策以外にも注目する材料があります。

 米大手格付け会社のムーディーズは10日、米国債の見通しを「安定的」から「ネガティブ」に引き下げました。史上初の米連邦議会下院議長の解任や今年度予算の成立が遅れていることなどから、米議会の混乱が債務支払い能力の低下をもたらす可能性があると判断したようです。実際に格下げするかどうかが今後の焦点になります。

 下院のジョンソン議長が提示した新たなつなぎ予算案は14日に下院で可決されました。政府機関が18日から閉鎖に追い込まれるリスクが大幅に低下しましたが、米議会の動きは今後も波乱材料になりそうです。米議会のガバナンスと米国債の格下げが、今後ドルの上値の重しになるのかどうか注目です。