イスラエル首相「戦争の第2段階に」、戦火拡大すれば世界経済混乱も

 一方で、中東情勢がより不安定になれば、世界経済にとってマイナス材料になることが予想されます。イスラエルのネタニヤフ首相は停戦を拒否し、地上作戦の続行を宣言し、10月28日には戦争が「第2段階」に入ったと宣言しています。

 一連のイスラエルの動きに対して、イランのライシ大統領は「超えてはならない一線を超えた」と発言しており、イランの参戦やレバノンのシーア派民兵組織ヒズボラが独自に介入し、制御ができなくなり戦火が拡大していく可能性もあります。

 イスラエルvsパレスチナの戦闘が、米英vsイラン・ロシアの代理戦争へと戦火が拡大していくのは避けたいシナリオですが、戦闘が長期化すれば、エネルギーだけでなく食料、貿易など広範囲に影響する可能性があり、世界経済の足かせとなる可能性があります。世界各国で反イスラエル、反欧米のデモが繰り返され、場合によってはテロが誘発されれば、さらに世界経済の混乱要因になる可能性があります。

 パウエル議長は、中東情勢の不透明感から、インフレへの警戒感だけでなく、景気後退のリスクも考慮し、かなり慎重な物言いになるかもしれません。市場はタカ派寄りのパウエル議長を期待していただけにその反動は大きくなるかもしれません。長期金利は下がり、ドル安への反動が見られるかもしれません。

 米国2023年7-9月期GDP(国内総生産)は予想を上回る4.9%でしたが、市場の評価は高くありません。10-12月期の見通しは急減速するとの見方が多く、世論のバイデン政権の経済運営に対する評価は低いままとなっています。背景には昨年3月からの計5.25%の利上げが住宅や自動車ローン金利に影響し、家計の負担増が影響しているようです。

 さらに、10月からの学生ローンの返済が始まり、家計を圧迫すると同時にコロナ禍の財政支援による給付金によって蓄えられた超過貯蓄が年末年始ごろから底をついてくるとの見方もあります。来年の米大統領選挙もあり、パウエル議長にとってはこれ以上の金利上昇は避けたいところです。

日本政府、物価高対策で為替介入踏み切る可能性も

 一方で、日本の岸田政権も所得減税を発表したにもかかわらず、支持率は政権発足後最低となりました。日本経済新聞社とテレビ東京が10月に実施した世論調査によると、物価高対策としての所得税減税は「適切だと思わない」が65%となり、「適切だと思う」の24%を大幅に上回っています。

 物価高対策は喫緊の課題となっており、円安が輸入物価を押し上げていることは大多数の国民も実感しています。植田総裁は、記者会見で輸入物価上昇による国内物価への波及を「第1の力」と説明し、国内の賃金と物価が好循環で回っていくことを「第2の力」と説明しています。そして来年の春闘を見極めるまでは次の政策修正には進めないと述べています。

 植田総裁は「第1の力」は近いうちに収束していくとの見方を示していますが、岸田政権内では輸入物価を押し上げる円安については相当強い懸念を抱いていると推測されます。来年の春まで待つことはできない状況です。政府が政治的圧力を表立って日銀にかけることはできませんが、為替介入はすることができます。

 10月の介入実績がゼロだったため介入警戒感は後退しましたが、この先、円安が進んでも口先介入だけだろうと思い込むのは避けたいところです。FOMCの結果待ちは市場だけでなく、日本の財務省も臨戦態勢に入っているかもしれないということは留意しておいた方が良さそうです。